眠る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです。最近テクノロジーをテーマにしたものに凝ってます)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます あとスターも励みになります!

パンツのポケット

友達は、下着メーカーで働く。当たり前だけれど、自分の下着は全部そのメーカーのもので揃えている。 彼氏にも、そのメーカーのパンツをプレゼントしていた。クリスマスや誕生ではなく、仕事の打ち上げやご飯をごちそうになったささやかなお礼に、パンツをプ…

風に吹かれるドローン

ドローンを買った。子供が喜ぶと思ったからだ。 ゴールデンウィークに飛ばそうと思った。休みだから何か子供が喜ぶことをしたかった。 せっかくだから、ちゃんとしたドローンを買おうと思ったら3万円もした。高い。200g以下だから、無人航空機だ。 部屋で飛…

足りない匂い

久しぶりに大学に用事があった。卒業証書をもらう必要があったのだ。 事務所で証書をもらったついでに大学を歩く。5年ぶりの大学はあまり変わっていない。 中庭と生協、そして、食堂。人が少ないだけで何も変わっていない。 校舎に入ると、校舎の匂いがすっ…

アドバイス

なぁ、わかるだろ。 人はアドバイスを聞けないんだよ。 もうそういう仕組みになってる。そういう身体になってるんだよ。他人のアドバイスを聞いた殊勝なやつは周りにいるか?いないだろう。要はそういうことなんだよ。人はアドバイスを聞かない。何度でもい…

ゴールデンウィークの次の祝日

ゴールデンウィークが終わった。次の祝日は、7月17日だとか。つまり2ヶ月近く祝日はない。 なんたることか。 俺が総理大臣なら、6月に休み入れるね。だって、連休が終わって、休みのない日が続くなんて、精神衛生上、耐えれないでしょ。もちろん総理大臣に祝…

死にたくなった時は

10年前のことだ。 僕がお世話になった上司がいた。転職の報告に行くと、悲しみの言葉を一通りくれた。そして、激励の後に言ってくれた言葉が、年を経つごとに重みを増している。 死にたくなったら、美味いものを食って寝ろ 当時は、その言葉の意味がまだあま…

間に合わせます

大切な会議だった。 俺も含めたメンバーはその会議のために1ヶ月前から資料を準備していた。普通だと1週間前から手をつけるくらいだから、どれだけ重要視していたかがわかるだろう。 それでも直前はやっぱりドタバタする。社長確認で訂正が入ったり、クライ…

ユリという女

ユリと言った。素敵な名前だな、と思った。清純そうなその子にぴったりだった。 実際に彼女はお嬢様だった。百合の象徴である「純潔」を表すかのように、清く美しく育てられた。聖母マリアの花が百合というのも納得だ。 僕は彼女に一目惚れをして1年かかって…

ゴールデンウィークの旅行を検討していて気づいてしまった自分の気持ち

ゴールデンウィークらしい。タカオが「旅行いこっか」とLINEを送ってきた。 最近はお互いが仕事に忙しかったので、気を使ってだろう。最近はすれ違いが多くデートらしいデートも数ヶ月していない。会ったのさえ3週間前だ。 付き合って1年だが、旅行もしたこ…

祖母への殺意の動機

9歳の少年が、祖母を殺した。ナイフでの刺殺(死因は出血多量)だった。 9歳の少年は、その1ヶ月前に祖父を病気でなくしたばかりだった。少年はおじいちゃん子、おばあちゃん子だったから、号泣した。 周りの親戚たちが心配になるほどの号泣だった。葬式中、…

デジタルで表現されてしまう好意

写真が好きだった。街を撮った。自然を撮った。そして、人を撮った。 何より人を撮るのが好きだった。友達を撮り、飲み会でみんながはしゃいでいるシーンを撮り、そして恋人の日常を撮った。 ナオは、沖縄生まれらしくきりっとした顔つきで、写真映えする顔…

彼女が飲んでいたコーヒー

コーヒーが好きだった。だから、デートではよくカフェ巡りをした。 目黒川沿いのカフェや長野の山奥にある森林浴が気持ち良いカフェ、虎ノ門にできたビルの上空のカフェ、新橋の隠れカフェ。たくさんのカフェをメイとまわった。 僕は、そこで、カフェラテを…

グラスをあげておろすまで

先日、以下のようなツイートを見た。 ドトールでアイスコーヒーを注文して、受け取ると同時に返却口のほうへ歩きながら飲み干し、グラスを置いて「ごちそうさまでした」と言い去っていくサラリーマンを見た。グッときた。 — ウイ (@ui0723) 2017年3月8日 読…

失恋のプロ

ミユキは自分のことを「失恋のプロだ」と言っていた。少しの自嘲も込めて。 恋愛体質だからすぐに恋愛する。でも、その分、別れも多い。いままで20以上の別れを経験してきた。たいていにおいてミユキが振られてきた。 だから、「失恋には慣れてるの」という…

ハッピー!

ある繁華街から20分ほど離れた落ち着いた住宅街にあるビストロのお話。 そこを経営するのは、老夫婦の2人。50代かもしかすると60代かもしれない。目玉はオムライスで、半熟さが売りで890円。夜よりもランチの方が活気がある。テーブルが5席ほどの小さいお店…

男の香水はどう思う?

「男性の香水ってどう思う?」と、男が聞く。 女が答える。 「いい匂いだったらいいけど、きつすぎると嫌かな。あと甘い匂いとかは苦手かも」。 表参道の全部で30席ほどのイタリアン。店の端の6人がけのテーブルでその会話は繰り広げられる。 「柔軟剤の匂い…

食べ物を密度で選ぶ女

レイコは、サラダバーでトウモロコシやツナといった重いものばかりを取っていた。レタスやカイワレのような葉っぱものには見向きもせず。 ある時、「葉っぱが嫌いなの?」と聞いたことがある。レイコは言う。 「レタスとかは食べた気がしなくて。やっぱり密…

ズッキーニの茹で時間

はじめて会った時の自己紹介は「私、ズッキーニみたいって言われるんです」という言葉だった。 ズッキーニはウリ科の食べ物で蛋白な食べ物だ。かぼちゃなどに比べて味が薄い。それゆえに、どのような食材や料理にでもあう。 そんなズッキーニみたいに、誰と…

金曜日の過ごし方

会社の飲み会で、話は恋愛に向かう。 1人の男が懇意にする女性がいる。今まで3回ほど食事に行った。前回は金曜日のデートだった。しかし、何もできなかった。ようやく女性の過去の恋愛の話が話題にでた程度だ。 男はその女性が気になっている。しかし、女性…

お店にまつわるエピソードを巡る冒険

彼はレストランを選ぶのが好きだった。そして、選んだレストランに行くと、必ずお店にまつわるエピソードを話してくれた。 - この松見坂のバーは、歌手の福山さんがオーナーという噂があるんだよ。本当かどうか知らないけど、雰囲気のあるバーだよね。ユキち…

ホテルのバーへ行け

私が、ニューヨークに一週間の旅行をしていた時の話だ。 その時に、日本人のミチヨさんという方と出会った。同じ宿の部屋だったのだ。ダブルベッドが2個あるシンプルな部屋。いわゆるドミトリー。そこで私はミチヨさんと出会った。 カールスバーグを共用部の…

ブルゾンちえみのメッセージが持つパワー

「「ブルゾンちえみ」が圧倒的な支持を得た理由」という記事を読んで、ある友人の話を思い出した。 彼女はシングルマザーで娘がいる。13歳。思春期だ。 その娘とお風呂に入っていると、娘から教えられる。 「彼氏と別れた」と。付き合っていたというのは、数週…

野球部のマネージャーの彼氏は誰?

野球部のマネージャーで、アイコという女の子がいた。かわいい女の子だった。今の子たちには伝わらないかもしれないけれど、タッチのミナミのような、少し勝ち気のある女の子だった。 もう1人、タカコというマネージャーもいたけれど、彼女は男勝りなキャラ…

あなたは沈黙を楽しめる?

「沈黙を楽しめる人」と彼女は言った。 僕はその言葉がズシっと胸に響き、意図せずに沈黙を生み出してしまう。 それは、「どういう男性が好きなの」と聞いた質問の回答だった。よく聞くような「筋肉ある人」「背の高い人」「面白い人」とは違った回答だった…

結婚はポーカー?ルーレット?

「結婚て、Winner takes allじゃん。最後の総取りじゃん」 と、イーピンを切りながらタロウが言う。 「つまりさ、人生では何人かと恋愛するでしょ。でも、最後には1人の人としか結婚しない。少なくとも日本ではね。 そうすると最後に結婚した人だけが幸せで…

絶望とローズマリー

つまらない会食の店を出ると雨。朝の天気予報では雨なんて言っていなかったのに。傘はない。 お店の傘を借りて、お客さんをタクシーに乗せて見送る。そして、今日は、私もタクシーで帰ろう、と思う。 月曜日からくたくただから、少しの贅沢。領収書は通るか…

宮益御嶽神社にて

学校でなぜ手のつなぎ方を教えてくれないんだよ、と思った。微分やフランス革命よりも重要だろうよ。 今日は2回目のデート。渋谷のデート。電車で40分揺られて渋谷につく。 まずはセンター街を散歩。そして、そこから少しはずれたところにあるゲーセン。UFO…

自動運転は事故は防げても悪意は防げない

まさか、「そんな偶然が」という思いだった。 その日、私は、40代のお客さんの接客をしていた。自動運転カーの試乗をしてもらい、私は助手席で話をする。実際に乗ってもらって、購入を後押しする。 運転中に「ブレーキを我慢してみてください」という。信号…

革命は食事の後で

パスピエさんというアーティストの歌に「ヨアケマエ 」という歌がある。 その歌で、とてもセクシーな歌詞がある。 革命は食事のあとで というフレーズ。 文脈はよくわからない。ただ、そのフレーズ単体が持つパワーは圧倒的だ。 食事の後に行う革命。それは…

迫りくる尿意との戦い

「空気読めよ」と、これほど強く思ったことはない。 私は目で「トイレ行きたい、トイレ行きたい」とアイコンタクトを送る。すっと目線をトイレに送る。カウンター席の端にある扉に目を送る。 でもこいつは気にせずひたすら喋る。私に席を立つスキを与えない…