寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

友情か仕事か、どっちを取るか

こんな間の悪いタイミングで、と少し考えた。

彼女と別れてそろそろ2年が経とうとしている。付き合ったのも同じく2年くらいだった。

その彼女が、彼に振られ、助けを求めている。

- 今夜、一晩で良いから、一緒にいてくれない?

と日曜日の23時の電話。ここからタクシーを飛ばすと30分で彼女の家には着けるだろう。ただ、問題は明日は朝から会社の試験があることだ。

彼女の気持ちもわかる。別れた時は、呼吸さえも十分にできない。眠れるどころか一人でいたくない。

「1時間以内に折り返す」と言ってから30分が経った。まだ結論は出ていない。

明日、試験がなければ、きっといっただろう。彼女のことを今でも恋しているわけではないが、とはいえ、大切な人であるのは間違いない。この2年間でも、何度もお酒を飲み交わした。一度、付き合った女性は、お互いを知っているという点では親友のような存在だ。

そう考えると、これは友情か。仕事よりも友情を優先すべきか、という厳しい命題をつきつけられている。走れメロスの気分だよ。

こういう時に、父親が生きていたらなんと言っただろう。生きていても相談はしなかっただろうけれど、いないからこそ、このような仮定のことを想像してしまう。

父親はよく箴言を好んで使った。「いつまでもあると思うな親と金。ないと思うな病気と災難」「若いうちの苦労は勝手でもしろ」などなど。今の参考になる言葉はなかったかと思い出す。あと25分。

こんな時にそんな都合よく、良い言葉は浮かんでこない。きっと、僕は彼女の元に駆けつけたいんだろう。ただ理性が邪魔をする。彼女へ向かう後押しをしてほしくて僕は父親の言葉を探す。あと20分。

父親とたべた料理ばかり思い出す。あと15分。

ああ、そうだ。父はこう言っていた。

- 家族は何より大切にするんだぞ

と。

そうだ。彼女は、僕にとって恋人でも友人でもない。もはや家族みたいなものじゃないか。

父は家族を大切にしろといっていた。だったら、僕は彼女を助けてあげないと!

僕はジャケットを羽織って、タクシーを拾いに家を出る。携帯では彼女の番号を押す。

「いま家を出た。1時間以内には着く。ついたらまた連絡するね」

- それに、彼女が本当の家族になるかもしれないわけだし。将来の家族も大切にしなきゃいけないよな、父さん