寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

待つのが何より嫌いな永沢

永沢は待つことが嫌いだった。デートをしている時に「何か食べたいものある?」と聞いても「待たないところがいいな」と言うほど、待つことが嫌いだった。

コンビニに入りコーヒーを買おうとしても、並んでいるので出てきたことをみたのは1回だけじゃない。「俺は、コンビニで並ぶほど暇じゃない」と言って、缶コーヒーを買っていた。

銀行のATMも並ぶのが嫌で、いつも夜遅くにATMを使っていた。「手数料が取られるよ」と言ったら「俺の時給を考えたら、並ぶより手数料を払った方がいいんだ」と言っていた。本当かどうかは知らない。多分、嘘だろう。ただ、同じ理由で、洗剤の詰め替えをしている時に、詰替え液を入れきらないまま捨てていた。「まだ少し残っていたんじゃないの?」というと「最後まで液が垂れるのを見る時間がもったいない」と言っていた。

初詣で神社に並ぶ時は「この時間がもったいない。この時間で何か考え事をしよう。そうだ。この初詣に並んでいる人たちの前で売ると一番儲かるビジネスはなんだろう?」と提案された。私は「寒いから暖かいもの」といったけれど、「いや、暖かさを保つための機材が大変だ。廃棄も多そうだから原価は高くなってしまう」と否定された。永沢いわく「おみくじを売るのはどうだ。しかも大吉多めの」と言っていた。

高速道路で渋滞にはまった時は「俺は渋滞で並ぶために生まれてきたんじゃない」と、言いながら、高速道路を降りることもあった。降りて、下の道を走った。迷子になって余計時間がかかったのだけれど、永沢は永沢で、それに満足していたようだ。

ただ、ある時に、彼と千葉だか東京の境目にある遊園地にいった時は、アトラクションに大人しく並んでいた。文句をたれられると思っていた私は事前に話のネタをたくさん用意していたのだけれど、肩透かしに終わった。「なんだ。並ぶのが嫌だってグチグチいうと思ったのに」というと「知らなかったのか。この遊園地は並ぶことが一番のアトラクションなんだ。俺は、何かをするために並ぶのは無駄だから嫌いだけれど、並ぶのが目的の場合は、、気にならないんだ」と言い切った。私は軽く永沢のレバーをパンチした。