寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

100パーセントの男性

朝の通勤途中、ある男性が目に入った。もし、世の中で「オーラ」というものがあるならば、それだったんだと思う。とはいえ、結局、それも自分が「なんか感じる」という思い込みにすぎないかもしれないけれど。いずれにせよ「何か」を感じた。

私はその人の前に立っていて、その人に気づいた。あまりの完璧さに思わず、眺めてしまう。その人は「完璧な男性」だった。鼻は高く、目は二重で優しく、座っているのでわからないが適度に高そうな身長。丁寧に整えられた髪。ワックスで固めたのか無駄毛が出ていない。ひげもなく、頬に不均等に伸びた体毛もない。服装はスーツで、シャツもアイロンがあたりパリっと皺もない。ハンカチーフもちらりと見える。エンジのネクタイが首からかかる。時計はどこのかはわからないけれど、きちっと左手首に収まり、相応の存在感を出している。靴も年季が入っているけれど、汚れがなく、ネイビーのスーツにあった黒のストレートチップ。さらに好感がもてるのは、どこぞのサラリーマンのように携帯をいじるのではなく、指をマッサージしている。その指も爪は深爪ではあるけれど、きちっと切られ、また、肌も荒れていない。きっとそれなりの手入れをしているのだろう。40前後でこの肌の美しさは逆に暴力的でさえある。メガネがかかってないのが残念だけれど、この人は私のために完璧であるのではない。香水か何かをつけているのかも知りたいけれど、今、それを知るすべはない。

村上春樹さんの短編で「100パーセントの女の子に出会う」話があったけれど、これは言うならば、100パーセントの紳士とでも言えるのかもしれない。正確にいうとアラフォーの雄、くらいが適当な代名詞だけれど。

もし、私が、勇気ある女性ならば、声くらいかけたかもしれない。ただ、実際は、勇気はない。しいていうならば女性でもない。さらに言えば、見かけたのは実は100パーセントの男性ではなく、100パーセントの女性だったのだけれど、それを形容するには、あまりにも表現する言葉を持たず、100パーセントの男性を書いてしまったのだけれど。そんな表現を放棄させるほどの100パーセントの女性を今朝、見かけた。そんなお話。