眠る前に読む小話

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恵比寿の魅力とは、他の町のちからを吸い取る点にあった

今週のお題「好きな街」に関して。

 

私が好きな町は恵比寿だ。つい先日は、住みたい町ランキングの1位にも選ばれた。長年1位だった吉祥寺を抑えて。

恵比寿が浮上!最新・住みたい街ランキング | SUUMOジャーナル | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

でも、そんなに恵比寿って魅力的な町?と思う人も多いかもしれない。特に地方などに人にとっては、恵比寿は、「何があるの?」という印象でしかない。実際、「何がある?」と言われると、何も気の利いた回答はできない。代官山のようにショップが多いわけでもないし、中目黒のように川が流れているわけではない。広尾のように外国人がいるわけでもないし、麻布十番のように東京タワーが近いわけではない。

しいていえば、ガーデンプレイスだけれど、ガーデンプレイスももはや20歳を迎えた。モールとしての走りとして、ヒルズよりも先に東京に生まれ、当時のデートスポットとしては強い魅力を誇った。ただ、ガーデンプレイスも最近は他のモールに人がとられているようで、年末のイルミネーションの消える時間も早くなった。オフィスもモルガン・スタンレーが退去し、一時期は人がまばらになった時期もあった。

とはいえ、今でもウエスティンの龍天門の担々麺は人気だし、クリスマスの時期になるとバカラのシャンデリアには多くの人を引き寄せる。ミッドタウンの庭のような華やかさとは違う落ち着いた輝きがそこにはある。西口のおしゃれなカフェと恵比寿横丁の雑多な町並みと猿楽珈琲の淫靡な香りは、「ここがいいんだよ」と力説するほどではないけれど、恵比寿の町には欠かせない魅力であったりする。

このような町全体が持つ「落ち着いているけど洒落ている」という空気感は恵比寿の魅力の1つはあるのだろう。主張しすぎないが、とはいえ凡庸ではない。そのような町だからこそ、住む人もモデルやクリエイターも多く、また、それらの存在がこの町の「落ち着いているけど洒落ている」という空気を醸成し続ける。

しかし、それだけならば、他の広尾や代官山との大きな差別化にはならないだろう。それよりも、この恵比寿が圧倒的に惹きつける魅力は、「近くのおしゃれな町から近い」という点にあるのだ。

つまり代官山のツタヤには歩いていける。中目黒は一本となりだ。広尾はガーデンプレイスからも歩いていける。東口からタクシーに乗れば西麻布や六本木も1000円以内でいける。目黒も一駅なのでビストロのモルソーには5分で尽くし、同じく、渋谷の宮益坂のなかむらまでもタクシーで5分だ。つまり、恵比寿は四方八方がおしゃれな町に囲まれているという点で、他のおしゃれな町の魅力を吸い取っている。この圧倒的な立地があるかぎり、他の町の魅力が増せばますほど、恵比寿にその魅力が還元される構造になっている。そう考えると、今回の構造は単騎で戦う吉祥寺とチームで戦う恵比寿の勝利とも言えるのかもしれない。

これが実は恵比寿の魅力なのであった。