寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

カステラの底が紙だと今更気づいた

 

カステラの底に付いているものを、私はずっとカステラだと思っていた。パエリアの魚介の殻のように、食べられないけれども、それはパエリアを構成する重要な1つのように、私はその殻をパエリアだと思っていた。それと同様に、私にとってカステラの底のあれは、紙ではなく、カステラだった。カステラを構成する1要素であり、カステラからは分離できないものだった。

しかし、私はいつか気づいてしまう。あれは紙でしかないのだと。

3年前に別れた彼のことを思い出す。彼は、地主の長男として優等生として育てられてきた。大学生になるまでエリートコースを歩み、社会人になっても親のコネで大手の代理店に入って。ただ、彼はそのプレッシャーを彼女に向けた。時に罵倒し、ときに暴力で。顔を殴られることはなかったけれど、あざができるほどのことは何度もあった。

私は、それに耐えた。その暴力さえも彼の構成する要素だと思っていた。それが彼の弱いところでもあり、愛おしいとも思っていた。でも、いつしか私は耐えきれず彼のもとをさった。

いま、思い返せばあれは、彼ではなかったのだ。暴力でしかなかった。ただの発散でしかなかった。カステラの底が紙だと気づくまで時間がかかったように、私はそれに気づくのに時間がかかった。

けれど、思う。もし、カステラの底がただの紙だとしても、他に代替可能性はないものなのかもしれない。それならば、たとえ、その紙がカステラではなかったとしても、カステラには欠かせないものだのだろう。そうならば、きっと彼の暴力も、暴力としては、法にさえ裁かれてしまうものだとしても、それはやっぱり、彼を支える根幹だったのかもしれない。

 

カステラを食べながらそんなことを思う。そして、「やっぱり私はカステラの紙は愛せても紙は食べれない」と思うのだ。

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以下のひろのぶ(hironobutnk)さんのツイートを参考にしました