寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

Instagramで過去の恋人と再会する

ビールの日光の透け具合が重要だ、とビーチの砂にビールの入ったグラスを埋めながらナギサは考える。

Instagramで重要なポイントは「構図」「対象」は言うまでもなく、それを活かすのは「光の利用だ」とナギサは考えている。実際、夜の写真よりも昼の写真の方が圧倒的にLikeがつくでしょう。

昨日は、食事の写真を投稿したので、今日はビーチの写真だ。単にビーチの写真だけだと面白くないので、自分を落とす箇所も入れたい。だから、ビールも写真に入れて「飲みすぎた」とコメントをする。そうすると単純に「ビーチ」の写真を投稿するよりも、人は受け入れてくれる。人は他人の写真には本質的には、興味がない。興味があるのは価値のある情報か人の失敗だ。昨日の食事の写真にも「食べすぎた、、体重がー」というコメントも合わせて載せておいた。本当は「この料理が最高に美味しかった」と伝えたいのだけれど、それをみた人は、その料理は日本で食べれないものならば、情報として意味がない。そんな情報は載せない方がいい。

無事にビールとビーチの写真を投稿したナギサは、この場所で他にどのような写真が投稿されているかを探す。Instagramでは、写真に位置情報を付けることができるのでその位置に投稿されている写真も見ることができるのだ。この離島は日本人が少ないため、外国人の投稿が多い。スタイルのよい水着が数多く並び、自分の全身は投稿できないな、と考える。

そんな中、思わず1枚の写真に目が止まった。その写真に映っていたのは、10年以上前に別れた恋人だった。最近はあっていないけれど、Facebookでは動きを見ているのですぐに分かった。Instagramでは繋がっていないので、まさかアキラがこの場所にも来ているとは気づかなかった。

アキラの隣にいるのは、白のチュニックの水着で背は私と同じぐらいの女性だった。第一印象はきれいな人だな、と思い、次にこの水着は可愛いな、と思った。そしてアキラの体を見ると、当時より腹は出ているけれど、相変わらず色気のある顔をしていた。

この島を選んだのはきっとアキラの好みだろうと思った。アキラとは昔から旅行の趣味があった。今の彼は、することがなく退屈そうに横で寝ているけれど、この何もない島が最高だった。アキラはこのおとなしそうな彼女と何もないこの島で楽しく過ごせたのだろうか。

あまりの深刻な顔に彼が気づいたのか「どうしたの」と聞いてくる。彼の顔を見て「なんでもないよ」と応える。彼は、「そう。何か食べる?」と聞いてくれて、ナギサは「ビールがあるけどミネラルウォーターが飲みたいかも」と応える。彼は納得したようにビーチサンダルを履いて、バーカウンターに向かう。

そうだ。アキラとは旅行の趣味もあったし、2人とも写真が好きだったけれど、それでも結局うまくいかなかったんだ。彼は旅行の趣味はあわないし、写真も撮らないけれど、喧嘩もしない。私が写真を取っているのを待ってくれる。今回は退屈そうにさせて申し訳なかったな、と思うから、今度は彼が行きたい場所に行こう、と思う。きっとそこではアキラのInstagramを見ることはないだろう。