寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

欠けた公園

その公園には欠けているものがあった。

しかし、揃ってもいた。たとえば、噴水があった。5メートルも吹き上がる噴水は、公園の中心に据えられ、多くの人々の目を楽しませてきた。朝の10時から17時まで、5分間隔で吹き上がり、時には鳥が水を飲み、子供がボールを投げ入れた。その周りの芝生には自然と人々が集まり、ゴザやビニールシートを持ち寄り、雑談を交わしていた。

遊具もあった。テニスコートさえあった。その市でもっとも大きい公園だった。ランニングする人たちはその公園を周った。行儀よく、挨拶をしながら。ときには外国人もいたし、女性も多くいた。朝の5時から走っている人もいれば、夜2時にはしるビジネスマンもいた。

しかし、その公園になかったもの。それは、公園沿いにあるカフェがなかった。なぜなかったのか。買える土地がなかったのかもしれないし、あるいは、まだどのチェーン店も気づいてないだけかもしれない。しかし、その公園の周りにはカフェがなかった。

イタリアのカフェを模したファサードとストライプのシェードのカフェがなかった。カフェスタンドさえなかった。スターバックスザネッティタリーズドトールもなかった。

その公園にいる人たちは、カフェがないことにさえ気づかなかった。普段、公園の周りにあるカフェは、あまりにも謙虚で、そこにあることを人に気づかせないのだ。しかし、同時に何か「足りない感」は人々の心にもやもやと残った。

公園を散歩をした後にはカフェで休みたいし、公園を眺めながらテラスで飲むコーヒーは何よりも憩いの時間となる。タバコを吸う人たちはカフェの灰皿が救いだった。ブランチのラテや食後のエスプレッソを飲めなかったのだ。その公園は、カフェが致命的に欠如していた。きっとカフェがあれば、公園に来る人数はもっと増えていただろう。

いずれに、人々はこの公園にカフェがないことに気づくだろう。ある人は、世界最古のカフェといわれているヴェネチアの「カフェフローリアン」が、サンマルコ広場の横にあったことを思い出すだろう。広場にはカフェが必要だったのだ。公園にもカフェが必要なのと同様に。

そしてあなたは次に公園にいった時に知るだろう。どの公園にもカフェが隣接されていることを。