寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

リンゴ好きなカップル

2人はリンゴが好きだった。

果物のリンゴ、だ。最初のデートではそんな素振りを見せなかった。でも、何回目かのデートで行ったバーで、フルーツカクテルがあり、女が「リンゴのカクテルってありますか?」と聞いたことで、女がリンゴ好きということが判明した。そもそもリンゴのカクテルはなくメロンのカクテルになったが。

とはいえ、「リンゴ食べに行こう」というように出かけることはなく、日常の細かいシーンでリンゴは脇役として活躍した。たとえば、風邪を引いた時は、リンゴは欠かさずに使われた。絞ったりんごジュースさえ作られた。あるいは、秋にはリンゴ狩りに行った。ブドウ狩りやイチゴ狩りに比べると知名度は劣るがリンゴ狩りもあるのだ。

2人は、どこかの国のことわざ「赤いリンゴは虫食いリンゴ」という表現を好んだ。「外見はよくても中身はわからない」というもので、日本語でいう「きれいなバラには棘がある」というようなものだ。たとえば「あの人たち幸せそうね」とテレビの結婚式を見かけた時に、男は「赤いリンゴは虫食いリンゴ」と言った。虫の食べてない赤いリンゴはどうすれば見分けられるんだろうね、という議論もしたが、答えは出なかった

ただ、時にリンゴで喧嘩もした。好きなリンゴの好みが異なっていたのだ。

男はフジのような歯ごたえのあるリンゴが好きだったし、女は王林のような柔らかいリンゴが好きだった。

男は、皮のまま食べるリンゴが好きだったが、女は皮は向いて食べる方が好きだった。

それでも、二人はお互い好きなリンゴを食べて過ごした。リンゴを投げたくなるような喧嘩をすることもあったけれど、男は女がリンゴを向く手つきが好きだったし、女は男がリンゴをかぶり付きながらパソコンを触っているのを見ているのが好きだった。

なお、そのパソコンは当然、Macだった。