寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

2020年のリアリティ・ショー

2020年、イギリスでは、あるテレビ番組が人気を博していた。「LOVERS」というテレビ番組で、実在する男女のリアルな恋愛模様を放送するというものだった。ただ、それだけのコンセプトだとすでに世界中にたくさんあるだろう。日本でもテラスハウスがある。

しかし、イギリスのこの番組がそれらと違ったのは、24時間密着するというものだった。週に2時間だけテレビで放映し、残りはインターネットでリアルな日々を見ることができる。この「リアルタイム」は想像するより人を興奮させるようなものだ。いわば、スポーツのように「どうなるかわからない」という楽しみがある。編集のある番組とは異なるのだ。

学生たちが学校でこの話題を延々と続け、家庭でも夫婦がこのテレビの会話に関して是非を侃々諤々論評していた。老若男女、「俺だったらこうする」「あれはない」と、好き勝手に自由にこの恋愛を楽しんでいた。ある意味、ローマの休日を超えて人々に愛される男女だった。

当の男女たちは英国以外の国に住む2人なので、どのように放送されているかもしらない。まさに自然体で恋愛をしていた。

そして、今日は、メインの男女がデートをする日で、「キスをするのではないか」と、人々は気が気ではなかった。

海辺の気の利いたシーフードレストランで食事をした2人は、車をおいて夜の海岸を歩く。女性は少し寄っており、靴を脱ぎながら浜辺を歩く。カメラは少し離れた距離から2人を映す。幸い、海岸沿いのレストランの光のお陰で暗くはない。

↑ それらが、テレビでリアルに流される。ロンドンの市民たちは街頭ビジョンに集まり、その動向を見ていた。まるでワールドカップの決勝を見るかのごとく。

しかし、1人だけ、画面を見ていない男がいる。名前をジョンといった。

- なぜ、あいつが、、、

テレビに映った女性をジョンは直視できなかった。なぜなら、彼の過去の恋人だからだった。

- なぜ、元彼女のデートなんかみなくちゃいけないんだ

彼女と別れたのは、お互いの本意ではなかったとジョンは考えている。彼女が海外に転勤になり、2人は別れたという結果だからだ。その彼女とこのように出会うとは。

ジョンは彼女がまだ好きだった。そんなジョンによって、彼女が口説かれているシーンを見るのは苦痛以外でもなかった。

テレビでは、浜辺で男が彼女の手をとった。彼女が歩みを止め、後ろを振り返り、男の顔を見上げた。まさに映画でのクライマックスのようなシーンだった。

イギリスの誰もが、手に汗を握ってこれからの展開に目を向けていた。

- 畜生!なんでこんなことに!

その時、テレビの先で彼女の携帯が鳴った。思わずため息をつくイギリス国民たち。舌打ちする者までもいる。

少し逡巡する彼女。そして、改めて携帯を見る。そこに表示されている名は「ジョン

」だった。

 

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※今回はたまたま見かけた写真から物語を想像に文章にしてみました。このNYTの写真は実際は、UKのEU離脱のシーンです