もっと渇きを
「食事の最高のスパイスは、空腹だ」とは言うように、飲み物の最高のスパイスは渇きだろう。
喉の渇きは、生死にも直結するため、よりビビッドに水分のうまさを感じることができる。
学生の頃の部活の休憩で飲んだ水のうまさは、一種の快楽でさえあった。あの、ペダルを押すと水が伸びてるウォータータンクは、一種の女神にさえも見えた。あれはすべてポケスポットにするくらいの価値はある。部活生にとっては。
私は、あの水の美味しさを味わいたくて走っているようなものだ。走って走って、汗をかいて。この暑さだと、本当に命まで乾いていくような気がする。そして、たどり着く冷蔵庫から取り出すペットボトルの水。水滴が眩しい。それを一気に流し込む。これは、贅沢とさえも言える。お金を出して買える美味しさではない。「ああああ」と思わず声がでてしまうほどの水の美味しさ。身体の乾いた部分に染み込んでいくのがわかる。あまりの美味しさに水を飲み込みすぎて口から溢れてTシャツにこぼれおちる水。その水の冷たさと美味しさ。
食欲と別で「飲欲」という言葉があってもおかしくない。もっと渇きたい。もっと水を美味しく飲んでみたい。