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寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

1つだけの

三軒茶屋の三角地帯では平日というのに、多くなサラリーマンたちが酒を飲んでいる。こんなに暑いとビールも飲みたくなるだろう。

ある焼き鳥屋のテーブルでは、3人が赤ら顔で楽しそうに話をする。20代の女性が1人。30代の男性が2人。テーブルの上にはつくねとキャベツ。

会話は仕事の話から恋愛の話、そして、最近、熱中していることに話が続く。

「最近、筋トレ始めたんですよ。そしてビジネス書を毎日読むようにしたんですよ。するとそれだけで毎日2時間くらいかかっちゃって」

「わー。毎日、筋トレしてるですか。えらーい」

「サトシ。違う。お前は、それら以外に仕事もしてるだろ。すると、その日、こなさないといけないのがたくさん増える。そうすると、きりがないんだよ。終わらない。『あれもしなきゃ、これもしなきゃ』と、精神も休まらない。

明日からこうしろ。朝起きて、その日、1つだけやりとげることを決めるんだ。そして寝る前にそれがちゃんとできたかを思い返す。それができていたら安心して眠ればいい。きっと今までよりぐっすり眠れる」

「なるほど。シンプルでわかりやすいですが、他にしないといけないことはどうするんですかね?」

「その考え方が違うんだよ。世の中に、しなければいけないことなんてほとんどない。しなければいけないことなんて、恋をすることと人を大切にすることくらいだ。それ以外のことはほぼ誤差だ。

お前がしなきゃと思っているのは、勘違いだよ。だから、それが1個であろうと100個であろうと世の中はそんなに変わらないんだよ」

そうかもな、とサトシは思った。アケミも「なるほど」と思うと同時に「恋をしなきゃな」と思った。