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寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

タイムマシン

「わぁ、久しぶり」

視覚で認識が先か聴覚が先か、いずれにせよ、一瞬で記憶が蘇る。思わず笑みが溢れる。無意識の笑みだ。

思わずバーカウンターにグラスをおいて歩み寄る。そしてお互い無意識に手をあわせる。黒いカクテルドレスを着ている彼女は、とてもきれいだった。

「5年ぶりくらい?」

「そうだね。ひさしぶりー」

人はなぜ偶然の再会を喜ぶのだろうか。そこには、理屈でない何かがある。人間はそのような偶然性を尊ぶようにできているのかもしれない。

「仕事で?」

「そー。同僚も向こうにいるよ」

「タカ君も仕事?」

「半分仕事。半分はなんとなくお酒が飲みたくなって」

「そうなんだ」

彼女が微笑む。沈黙には種類がある。雄弁な沈黙と無言の沈黙。2人は、数秒の雄弁な沈黙を楽しむ。「変わってないね」「変わったね」「きれいなままだね」「相変わらず黒色が好きなんだね」といったお互いの無数の無言の言葉がお互いを行き交う。

これって昔の出会いが生んだ未来への贈り物なんだな、と思う。

これは、特に何か変わったことをしたんじゃない。ただ昔の知り合いに再会しただけ。昔、誰かに「会った」ということが、時間という熟成期間を得て、それだけで価値を持ち、新しい価値をもって帰ってきた。「再会」という名前に代わり

雄弁な沈黙が2人を包んでいく。