寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

LINEの返事屋2

最初のお客は、カオルの知り合いだった。

「ねぇ、ねぇ、私のバイト先でミサの話をしたら、先輩が相談したいことがあるっていうの。どうかな?」

私は特に乗り気でもなかったけれど、いち大学生としてお金には困っていたので、その点で魅力的だった。

相手は留年を一年した大学生。高杉さん。23歳だ。ミサとは別の大学だが、同じ喫茶店で働いている。ミサいわく「可もなく不可もなく。でも不可のない男性の方が少ないから、そういう意味では、良い人かもね」とのこと。

高杉さんとは、私の大学の近くのドトールで会った。少し量の多いカフェラテを飲みながら、カオルと一緒に話を聞く。

「実は」という言葉から吐き出されたストーリーはシンプルだった。高杉さんは友達の恋人と付き合っている。それで友達が怒っている。友達関係を修復したい。

都合の良い話だとは思う。友達の彼女と付き合った時点で、そのようなことになるのは想定しておくべきでしょう。とはいえ、私みたいな年下にそう言われるのは嫌だろうと思い、黙っておいたけれど。何よりこれは最初のお客さんだ。丁寧にやらないと。

友達とのラインやグループのラインを全部見せてもらった。友達は良い人そうだった。つまらない投稿にも丁寧にかえしてくれていた。

自分の彼女が友達にとられたとわかってからも、高杉さんとのLINEはブロックしなかった。「◯◯と付き合ってるの?」という友達のLINEに対して、高杉さんは「そう。黙っててごめん」と返す。それから、友達は返事がなく、高杉さんは謝罪のラインを送った。会おう、という話も返信がない。ただ、既読にはなっている。

既読になっているということは絶縁したいというわけではない。ただ、きっと友達も、消化しききれてないんだろう。

私はこうアドバイスをする。

誠実にどんなに長くなってもいいから、友達に思いを伝えて。彼女と付き合った理由も、そして、いかに彼が大事かも。ただ「許して」といった言葉は使わない。許してもらえないものでしょうから。そして、今すぐに会ったり、よりを戻すのはできないと思って。「落ち着いたら返事をください」という形でLINEを送って。そして、1か月後にまた改めて送る。それを1年続けてほしい。

友達が高杉さんに求めているのは贖罪だろう、と考えた。1年かけて、高杉さんは友達に謝り続ければいい。それがいつしか友達が求める罪の分水嶺を超えれば、いつか返事はかえってくるだろう。

私はそうして、3時間の作業で1万円を得た。バイトとしては悪くない時給だ。しかも成果報酬ではないし。値付けは適当だった。3時間3万円は高すぎるし、3万円3000円は安すぎる。1万円くらいだろう、と。

こうして私は最初の仕事を終えた。