寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

太陽としての女性

女の友人と食事をしていたんだよ。友人といってもここ数年の仲でそこまで濃い関係じゃない。身体の関係はない。ただ、お互いボディタッチがあるくらいの親密さはある。数ヶ月に1回は二人で食事を食べるような仲。僕に恋人がいなければ、どうかなっていたかもしれないけれど、今のところは何も起きていない。

今回は彼女が昇進したということでお祝いの食事だった。最近、仕事関係で教えてもらった西麻布のビストロでのお祝い。隠れ家のようなお店で、店名もフランス語で「家」だか「居間」だか「暖炉」というような名前だった。要はこじんまりとして、人の家にいるような落ち着く空間だよ。

そこで、中位のコース料理を頼む。こういう時に一番低いコースはなんか湿気てるだろ。お祝いだし。

シャンパンで乾杯し、パテを食べ、スープを飲み、メインに入る頃には、ワインのボトルも半分くらい空いていた。

彼女が言うんだ。

「いままで、私は年下の子が好きだって思っていたの。でも、最近は年上の人も気になっていて」

「へえ。どうしたの。何かきっかけがあったの?」

「叔母がなくなり、死について考えることがあったのね。で、寿命を考えると女性は90歳弱で男性は80歳くらい。7歳くらいの差があるらしいの。だから、2人が同じ年として、2人とも平均寿命で死ぬとしたら、女性の方が7年くらいは1人で生きていかなくちゃならないの」

「そうだね」

「もし私が7歳以上年下と付き合ったら、私が先に死んで、夫だけ残るわけでしょ。それは嫌なの。女性は友達付き合いも上手だから1人で生きていけるの。ただ、男性は、多分、1人で生きていけないと思うの。不器用だし。生活もできないし。だから、私は夫を看取ってから死にたいの。私が先に死ぬことになったら、死んでも死にきれない」

俺は、神戸の牛の肉を切りながら、彼女の言うことを考えたよ。彼女が言っていることはわかる。しかし、それを真剣に考えるってすごいな。

そういうえば、俺のおふくろも犬をかっていたけど、数年前に犬が死んだ。その後に新しい犬は飼わなかった。「次の犬を飼うと私の方が先に死んじゃうから」と、残された犬のことを心配して、自分の孤独を選んでいたな。

- 原始、女性は実に太陽であつた

と誰かが言ったけれど、実際に女性は太陽なのかもしれないな。男は太陽に照らされてやっといきるんだよ。太陽がなくなれば闇の世界に落ちていってしまう。

ワインの渋みがやたら舌にのこる西麻布の夜となった。