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寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

優しい嘘

世の中の嘘には2つの種類がある。「優しくない嘘」と「優しい嘘」だ。

世の中の多くの嘘が優しくない嘘だ。これは「自分の過失を偽るための保身」や「政治家の詭弁による抗弁」、「相手を騙すための欺瞞」があたる。要は、相手を陥れたり、あるいは、自分の保身のためだけにつく嘘だ。

もう1つの優しい嘘とは、相手のためにつく嘘である。

典型的な例がこれだ。

- いやー、美味しかったね

- 美味しかった〜

- さて、もう23時だね。これからどうする。うちに美味しいアイスがあるんだけど、うちでデザート食べない?

- 美味しいアイス?

- そうそう。北海道の友達が送ってくれたアイスで、なんかミルクがすごいミルクなんだよ

- へー。気になるな。言ってみようかな

というような。いわゆる女性が男性の家やホテルに行く時に「そういうつもりではなかった」と言い訳をつくために男性が設定する嘘である。

これは非常に優しい嘘で、みながそれを嘘とわかりながらも、その嘘を元に演技を続ける。世界に優しい嘘である。

しかし、ジャッジが悩ましい嘘もある。たとえば、癌に関して親族が本人には言わないケースだ。これも本人のためという意味では優しい嘘だが、本当に本人のためかどうかは、本人しか判断できない。つまり「どうせ死ぬなら知っておきたい」という人と「死ぬのは避けたいので知らない方がいい」と考えるパターンによって、その嘘の意味合いがことなる。なお、この場合はいずれの場合も、嘘をついている親族は、嘘の重みを持って生きていく必要があり、そういう意味でも、この嘘は優しくない。

また、転職時に「上司が嫌で辞める」場合でも「家庭の事情で」というのは、相手のことを慮っているかもしれないが、半分は、自分が軋轢をうまないためであり、そういう意味では、これも純粋なる優しい嘘とはいえない。本来は、本人に「あなたのせいでやめます」と言ってあげた方が本人のためになることだってある。

または、恋愛で「他に好きな人がいて別れる」という場合も、「ちょっと1人になりたくて」という嘘もある。これも、転職の問題と同じように相手のことを考えながらも、自分にとっての保身の意味も含まれるので、難しい嘘である。

そう考えると世の中の大半は、優しくない嘘と難しい嘘になってしまう。

しかしながら、もっとも優しい嘘を私は知っている。

それは、平和という単語だ。政治学では従来、平和とは「戦争のない状態」と定義されていた。つまり、世の中から戦争は避けられないということが前提となった定義だ。その後、「戦争の原因となる構造的暴力がない」という状態も平和とされた。しかし、いずれにせよ、それは「人々が手と手を取り合う社会」という平和が従来持つ概念とは程遠い。

そして、各国もそれを理解している。しかしながら、それでも、平和というものを信じ、それを希求し、それを唱え続けるということは、きっと世の中に求められている優しい嘘であると私は知っている。