眠る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです。最近テクノロジーをテーマにしたものに凝ってます)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます あとスターも励みになります!

土曜の朝のけだるみの中で

女が「せんせい、あのね」と手でメガホンを作って、男に呼びかける。

男はパソコンの画面から目をはなす。女が座るソファーの方に目をやる。女は男を見つめて何もしゃべらない。

「どうしたの」とパソコンに目線を戻しながら男が言う。部屋には、北欧の歌手の澄んだ歌声が流れている。

「せんせい、あのね。今日、わたしは久しぶりに彼氏と会ったの」。女はソファーに寝転がり、天井を見ながら喋る。

「だから、今日はどこかにいきたいな、とおもいました」。女は窓の外を見る。そこには数日振りの青空が見える。

男はパソコンを打つ手を止めて、少し目をつむる。「そうだね。俺は先生ではないけれど」。

「今日を楽しみに、先週は糖質カット頑張ったよ。夜はご飯やパンは食べなかった。せんせー」。

男は椅子に深く腰をかけなおす。そして腕組みをして少し考える。

「それはえらいね」。

女はソファーから降りて、男の方に歩く。そして床に座る。男は女の髪の毛を撫でる。

「もう少しで仕事終わるから待ってね。食べたいもの考えておいて」

カムチャッカの若者が仕事をしている時、メキシコの娘は夜ご飯の想像をしているのです」男の片腕で頭を撫でられながら女はいう。

「どうしたんだ。今日は懐かしの教科書がマイブームなのか」

女はうなずき、立ち上がりながら、キッチンへ向かう。冷蔵庫をあけ、何か入っていないか確かめる。そして、ポッキーを取り出し、つまむ。

そして、ネスカフェのコーヒーメーカーに水とカプセルを入れ、珈琲を沸かす。その間、「ああ、あたし、おなかがすいて軽くなったから、ういたのね。」と女はつぶやく。

珈琲が湧くと、女はカップを2つ戸棚から取り出し注ぐ。1つには牛乳を入れる。牛乳を入れたカップを男が作業する卓上の上に置く。

「サトシはコーヒーが大すきでしたですから、どくやくを入れたコーヒーを、ふつうの コーヒーにまぜて、食べさせました」

「なんだ。このコーヒーは毒薬が入ってるのか。かなわないな」と男はつぶやきながら、コーヒーを一口飲む。

女は男のパソコンの画面を見ながらつぶやく。「私は、へえ、こいつはつまらないなと思いました。私が、コーヒーを持っていってやるのに、そのおれにはお礼をいわないで、神さまにお礼をいうんじゃア、おれは、引き合わないなあ。」

「あ、ごめんね。ありがとう。美味しいよ」と男はいう。

女は、笑顔を見せて、ソファーに戻り、携帯をいじりだす。5分ほどたって 「いるかいないかいないかいるか」 と発音しだす。

男は「いるよ。いるいる。いるいるいるか」と気だるそうに回答する。

女は満足そうな顔を見せてソファー上で目をつむる。窓からの日光が女を照らす。

「ほんとうに人間はいいものかしら。ほんとうに人間はいいものかしら」と女はつぶやく。