眠る前に読む小話

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もっとも愛されたタイの国王

2016年10月13日、タイの国王「プミポン国王(ラーマ9世)」が他界した。国王としての在位期間は70年と非常に長い。しかし、その70年は平坦なものではなかった。

軍事の強いタイでは何度もクーデターが起こった。冷戦の時代は、共産国自由主義陣営との戦いに巻き込まれた。ラオス内戦があり、ベトナム戦争があった。それでも、タイは独立国家であり続けた。カンボジアラオスとの国境線争いがあり、アジア通貨危機も起こった。それでもタイは今まで立憲君主制を維持し続けた。

その背景には、プミポン国王の存在が大きかった。国際力を持った政治手腕と現場にまで飛び込んで経済を立て直す統率力、そして、国を思う力が人々の敬意をあつめ続けた。

国王は、どれほど敬愛されていたのか。

  • タイでは1日2回、国王を称える国家が流れている。その間は人々も足を止める。
  • 誕生日には、国王の色である黄色の服を着る。
  • 不敬罪が存在し、YouTubeに国王を侮辱する動画が投稿されYouTubeへのアクセスが遮断されることさえあった。

1992年に起こった「暗黒の5月事件」でもプミポン国王の言葉が国を救った。当時、軍部を代表する首相と民主化を進める指導者の武力対立によって、タイ国内では数百人が死んだ。そんな時にプミポン国王は、2人を呼びつけ、こう言った。

「国は、1人や2人のものではない、皆のものだ。

問題は、我々が互いに問題解決に当たろうとしないところにある。時に人は暴力で物事を解決しようとする。その結果、人々は何のために戦っているかを忘れ、相手を倒し勝者になることだけを考えてしまう。

しかし、そのような戦いに勝利はなく、危機があるだけだ。そんな目的を忘れた争いの結果にあるのは敗者だけだ。そして敗者の中の敗者が国を作ることになる。そんな破壊の上にたって『自分が勝者だ』といって何があるというのか」