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寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

ある夫婦におけるハロウィンの夜

最後にセックスをしたのはもう1年も前だ。もちろん相手は旦那とだけれど。そう、私達はいわゆるセックスレス

そんな私がハロウィンのニュースを見た。「チャンス」と思った。セックスレスを解消するチャンスだ。

10月31日。生まれてから「ハロウィン」を楽しみにしたことは一度もなかったけれど、今回は特別だ。ドキドキと楽しみの合わさった気持ち。

いろいろ考えた。制服や水着、メイド服など、男性が興奮するような衣装を着て、旦那に興奮してもらおうと考えた。でも、旦那が何のフェチかなんて知らない。まさか5年も一緒にいて知らないなんて、と思うけれど、知らない。旦那のパソコンを見れば、AVからわかるかもしれないけれど、旦那のパソコンを触ったらそれこそ離婚危機だ。

だから私が選んだのはセクシーな下着だ。これだったらやりすぎな感じは少ないし、セクシーな下着が嫌いな人はいないだろう。

アメリカのブランドの下着を買った。赤のスケスケの。

その日に向けてムダ毛をそって、パックまでしちゃったりして。オイルまで塗り込んで。身体を仕上げていった。

そして今日。いつものように一緒に食事を取る。今日はハロウィンだね、と話を刷り込んでおく。そして、別々にお風呂に行く。

旦那がベッドに入り、私は洗面所で着替えをする。少したるんだ腹の肉をつまんで見るけれど、今更どうしようもない。

寝室に入り、何度も練習したセリフを私は言う。

「じゃーん。見て!これ。素敵でしょ。ハロウィンだから下着をドレスアップしちゃった」

旦那が布団をめくり、私の身体を眺める。私はここ数年経験していないドキドキを体験する。呼吸が浅くなる。旦那の言葉を待つ。

旦那は目を少し見開いて、呼吸をする。そして、少しにこやかなな顔になり言う。

「いいね。セクシーだよ」と。

違う。私が聞きたかったのは、そんな評価じゃない。

「後ろ見せて」とか「もっと近づいて」とか「触らせて」とか。もっと血の通った表現を聞きたかった。旦那としての評価ではなく、男女でやり取りされる言葉が聞きたかった。

私はすべてが恥ずかしくなり、そして、それが憤りになり、そして、情けなくなった。何しているんだろう、私って。

トイレに行くふりをして少し泣いて。それから寝室に戻る。

呼吸を整えて、旦那の眠る横に身体を滑らせる。旦那に背中を向けて。

旦那からは寝息は聞こえない。寝ていないのだろうけれど、何も言ってくれない。

私はハロウィンを恨みながら、眠れない夜をむかえる。