眠る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです。最近テクノロジーをテーマにしたものに凝ってます)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます あとスターも励みになります!

あなたが要らないもので世界が動く

「お釣りはここに入れておいてください」と、男の人は募金箱を指差しながら、立ち去っていった。

レジの金額が198円だったので、お釣りは2円だろうか。レジの人はその2円を募金箱に入れていた。

彼は寄付をしたいから入れたのかもしれないし、あるいは、お釣りを待つ時間がもったいないから、そう言ったのかもしれない。レジのお釣りを待つ時間を5秒だとすると、彼にとって、その5秒は2円以上分の価値があったのかもしれない。時給1440円以上だと、5秒は2円以上の価値になる。

つまり、彼にとっては、2円をもらわない方が、お金がたまるという計算になる。もちろん、その5秒分に仕事をしていなければ、意味がないけれど。

笑い話で、ビル・ゲイツが1万円札を落としたら、それを拾っている時間の方がもったいない、ということを聞いたことがあるが、彼の稼いでいる金額からすれば実際にそうなんだろう。

こう考えると、世の中には、実は「本人はいらないけれど、他の人には価値のあるもの」ってけっこうあるんじゃないかな、と思う。

関連する話として、最近、成田空港で「ガチャガチャが設置されて人気」という話を聞いた。

どういうことか。

海外にいったことのある人はこんな経験はないだろうか。使いきれなかった小銭が邪魔でどうしたらいいかわからない。

札は両替できるのだが小銭は両替をしてくれないことも多い。そうすると、その小銭は自宅まで持ち帰ることになるが、記念品になる以外に使い用途はない。たとえもう一度その場所に旅行に行くことになっても、その頃はその小銭はいろんな国の小銭と一緒になって、使われないようになっているだろう。

そのような小銭をガチャガチャに使える、ということで人気を博しているらしい。北海道にきた外国人が帰る前に余った小銭でガチャガチャを使う。そうすると良い物に変わるかもしれない。普段の日常でガチャガチャはしないけれど「捨てるくらいならば」と使ってくれる。

これも、レジのお釣りの寄付にも近い世界観だ。要らないものを価値のあるものに変えるという。

 最近、話題になっていた「エコキャップ運動を辞めた話」も近い話だろう。あなたはペットボトルのフタは要らない。しかし、それをゴミ箱に捨てるのではなく、リサイクルに分別する。それがいつしか、ワクチンに使われる。

もしかすると、あなたが持っている「優しさ」もそうかもしれない。あなたは思う。「優しさなんて持っていても何もなりゃしない」と。優しさで自分は救えない、と。

しかし、そのあなたの有り余る優しさは、捨てられるのではなく、誰かに向けられれば、それは、他の人が切実に望んでいる優しさになりえるのかもしれない。