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寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

ワインバー

仕事帰りにふらっとワインバーに寄った。金曜日だし、仕事で遅かったし、一杯くらいは息抜きがいいんじゃないか、と。

ちょうど会社の帰りにいつも気になっていたバーがあった。ワインバー。そこを訪れよう、と扉を空ける。

そこは、カウンターが10席、テーブルが2というこじんまりとしたバーだった。カウンターの中には女性が1人と男性が1人。そして、座っているお客が男が3人。

その人達の間に入り込むように座る。ワインバーらしく皆、ワインを飲んでいる。見よう見まねで赤ワインを一杯。

こういうバーでの楽しみ方はカウンターでの会話だ。周りの会話を眺めていると、男たちはカウンターの中の女性に話しかける。常連たちのようでカウンターの女性も気さくに話を返す。

美貌は特別言い訳ではない。しかし、それでも、男たちが嬉しそうに話しかける。

- どうして、こんなに彼女の元に人が集まろうのだろう

後から来た客も親しげに女に話しかける。女も客のことを名前で呼ぶ。常連に愛されている店なんだ。

お酒を飲みながら会話を聞いていると、彼女の魅力が理解できた。彼女はすべての会話を受けとめるのだ。

- ビールください

というワインバーにおける男のジョークには、「いやぁよ。ワイン飲んで」と返す。

- 寒いねー、外は。中はぬっく

という独り言に対しては「ぬっく」と微笑みながら返す。眠そうにしていると、「お水飲みますか」と言ってくれる。

ああ、これは人を惹き付けるな、と思った。

人は生きていくと時に摩擦の中で生きる。人に気を使い、時には頭を下げ、あるいは無視され、嫌がらせされ。心は摩耗し、そして凝り固まっていく。

そんな時に「何を言っても受け止めてくれる」という場所は、想像するよりも暖かいことなんだ。自分がここでは受け入れられる。

それが、このバーの魅力であり、この女性の才能なんだ。そして人の魅力は美しさや面白いさだけではない。

女性が男性に器の大きさを求めるように、男性も女性に暖かさを求めるのかもしれない。特にこんな寒い日には。