寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

カバンの持ち手

あなたがカバンを大切にしたいと思うならば、一番見るべきポイントはどこか知っているか。

見た目でも、ブランドでも、容量でもない。

それは、持ち手だ。

有名ではないブランドでも人気のあるカバンは、たいてい、持ち手がしっかりしている。しっくりくる。まるで吸い付くように。

そうするとどうなるか。重さも感じなくなるのだ。

逆に持ち手があわないと荷物は重く感じる。たとえばスーパーでペットボトルが入ったビニール袋を想像したまえ。あれほど重いものは他にないだろう。

もちろんこれは持ち手と手の接触面を広げるという人間工学的な側面もあるのだが、いずれにせよ、手に馴染むカバンを持つと、もう他のカバンは持てなくなる。

まるでカバンから自分にぶら下がってくれているように思えるのだ。

こういう話をしっているか。あなたは赤ん坊を抱いている。赤ん坊が起きている間はそんなに重くない。しかし、赤ん坊が寝た途端、急にその赤ん坊が重く感じる。

これは、赤ん坊が起きている時はあなたに抱きついているからだ。あるいは「抱かれる」格好をしているからだ。しかし、寝ると、そのような行儀はどこへやら。赤ん坊は「抱かれる体制」を解く。すると、人はそれに一層の重みを感じる。

つまり「持って欲しい」という意思表現をしているものは、それが赤ん坊であれ、カバンであれ、軽くなるのだ。

騙されたと思って、今度から、カバンの持ち手を調べてみるといい。気に入った持ち手が見つかれば、彼女や彼氏と手をつなぐよりも、カバンを持ちたくなるから。

そのためにあなたは両手がある。片手には恋人、片手にはカバン。そのための両手なのだから。