寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

メリークリスマス

サービス業をやってると避けられないけれど、それども毎年一番つらいのがクリスマスだ。

クリスマスで、幸せそうなカップルたちを見ながら注文を聞き、お酒を注ぎ、お見送りをする。もちろん、恋人たちの幸せの支援をできることはうれしい。ただ、かたや自分の不幸せを嫌でも見てしまうことになる。

自分だけなぜ恋人がいないんだろう。私もレストランでクリスマスを祝ってくれる人ができるんだろうか。

恋人がいる時は気にならなかった。たとえクリスマスに仕事で彼氏と会えなくても、仕事が終わってから会うことができた。ただ、恋人がいない時は切ない。私は人の幸せを応援する。けれど、自分自身は幸せじゃない。寂しい。

そんなことも考えられないほどの忙しさでクリスマスの夜が終わり、帰り道でそんなことをぼんやり考える。

今日は自分に贅沢をさせてあげよう、と帰宅途中のコンビニで少し高い赤ワインとチーズを買う。

赤ワインを持ちながら家に帰る途中、酔っ払った男性が声をかけてくる。

「メリークリスマス」

思わぬ声にびくっとしたけれど、「メリークリスマス」と呟いてみた。

なんだか微笑んでいる自分がいた。

知らない人のメリークリスマスの一言で自分の不幸せが帳消しになるほど安くはないけれど、思ったより身体が温まった自分がいる。

「メリークリスマス」ともう一度、誰にも聞こえない大きさでつぶやいてみる。