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寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

メニューと違うものがでてくるレストラン

その店では、頼んだメニューと違うものがでてきた。

そもそもはその店はメニューなんてなかった。座れば、何かが出て来るのだ。

「今日のあなたにおすすめ」という感じで、その人の雰囲気にあったものがでる。ただし、実際のところは「今日の買いすぎた食材で作れるメニュー」という事が多かった。他の客がカレーと肉じゃがを食べているのを見ると「あ、今日はじゃがいもを大量入荷したんだな」と推測がついた。

他の人がオーダーしたメニューということも多かった。みんなの分を一緒に作れば早いからだ。だから、隣の席で「オムライス」と頼むのを聞いたら、「あ、今日はオムライスになりそうだ」なんてことを想像する。とはいえ、その前の客が「チャーハン」と頼んでいたら、そのオムライスさえもチャーハンになるので、結局のところ、何がでてくるのか想像もできなかった。

そのため常連客はメニューなんて見なかった。意味がないからだ。

ただはじめてきた人は「メニューは?」と聞くので、それ用に色あせたメニューがおいてあった。デザートに「ナタデココ」さえものった昭和なメニューだ。

でも、メニューを見て頼んでも、違うものがでてくる。初見さんは「カレーを頼んだのに、なぜハンバーグがでてくるの?」と、文句が言う。そんな客には、「それがうちのカレーです」とハンバーグを指差しながら言うこともあった。店がいうならば、そのハンバーグはカレーなんだろう。

それでも、それなりに人はきていた。人は自分で食べ物を決めるのもめんどくさかったのだろう。「これくえ」と出されるのはなかなか居心地が良かった。「自宅で食べる料理みたいだ」という人もいた。確かに、家庭がある人にとっては「今晩の食卓」は何かわからない。そういう点で、このレストランも似たようなものだった。

ただこのレストランでも、唯一正しく出て来るメニューがあった。

それは「味噌汁」だった。味噌汁を頼んだ時だけ、ちゃんと味噌汁がでてきた。

店員に理由を聞いたことがある。

「味噌汁を飲みたい人には、味噌汁しか飲ませられないよ」と言われた。

そういうもんかな、と思った。とりあえずその店の味噌汁はめっぽう美味かった。