寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

バスの最終停留所にある家に生まれて

私の家は、高校からバスに乗って30分乗った場所にあった。バスの最終停留所だった。

駅から歩いて帰るには遠いので、私は高校にバスに乗って通う日々だった。坂の多い町だから自転車はあまり乗らなかった。

バスのいい思い出はあまりない。寒い冬に待つバス停は辛かった。カバンを持つ手がかじかんだ。終バスは22時頃だったから、高校生の頃はみんなより早く部活から帰る必要があった。

駅からバスにのっても、1人1人と降りていって、最後はだいたい私1人になった。自分だけが取り残された気持ちになった。私だけが遠い場所に住んでいる。1人のバスは悲しかった。私のためだけに走るバスにも申し訳なかった。1人のバスは寂しさしかない。

それでもバスに乗り続けないといけなかった。それに乗らないと私は学校にいけなかったのだから。

大学生になって1人暮らしをはじめた。そして、バスに乗らずに生活できる日々にほっとした。

電車は素晴らしかった。定刻通りに来る電車。気を使ってバスを押さなくても自動で駅に止まる電車。電車は気を使うことがなかった。

でも、そんな私が結婚した人がバスの運転手だったなんて、私自身、笑ってしまう。

あんなに嫌っていたバスなのに。でも、やっぱり私はバスに守られていたのだと思う。バスがなければ、私は日々を送ることはできなかったのだから。

だから、彼が、私以外の人をバスに乗せることになんだか嫉妬してしまうことも許して欲しい。こんなこと彼には言わないけれど。

なんだか悔しく、いつか黙って彼の運転するバスに乗ってみよう、と企んでいるのだ。