寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

次回のランチ

会社を辞める人がいて、一緒にランチをした。

「なんで辞めるの、これからどうするの」といった定形的な質問を繰り返した。営業の仕事をしている彼女はキャリアアップのため、外資系の会社に移るそうだ。すごいな、という感嘆とともに、軽やかに会社を移れることに少しの嫉妬を覚えた。

そして日常会話になる。でも、やっぱり普段とは違う。もしかすると今日が最後かもしれない、と思うとなんだか寂しさがわいてくる。あんまり仲が良かったというわけではないけれど、それなりに好きなところもある子だった。

会社が変わると、よっぽど仲が良い相手ではない限り会う機会は極端に減る。それって、お互いの人生から、お互いが死んでしまったのと一緒だな、と思った。

Facebookで近況が流れていようとも、とはいえ、もう交わることはない。

でもそれを言うなら、電車で隣に座った人とも、もう会うことはないかもしれない。一期一会。電車に乗るたびに別れを悲しまなければいけない。話をしたことも、目線も合わしたことのない相手だけど、同じ空気くらいは吸った。

でも電車に座った人とランチはしないしな。やっぱり、最低限ランチをするくらいの人じゃないと、別れとはいえない。

帰りは、私がランチをおごった。相手の方が1歳年下というのもあったけれど、なにより餞別代わりのパスタだ。

すると彼女は「じゃあ、次回は私がごちそうさせてもらいますね」と言った。

可愛らしいセリフにさすが営業だな、と思った。会社が分かれてもこれからもよろしくというニュアンスを込めている。

同時に、もっとこの子と話をしておけばよかったな、と思った。もう会わないだろうな、と思ったけれど、またランチをしてもいいな。フリーランチだし。

そうか。あわない間は、自分にとって相手は死んでいるけれど、「久しぶりにご飯いかない?」と呪文で生き返らせることもできるんだ。そっか、と思った。