眠る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです。最近テクノロジーをテーマにしたものに凝ってます)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます あとスターも励みになります!

冬の朝から逃げ出したくて

低血圧の私にとって、冬の朝は地獄だ。目覚ましは2つかける。iPhoneと目覚まし時計だ。iPhoneでも時間は5つ設定する。7時、7時5分、7時10分、7時12分、7時15分。7時15分で私はやっと朝と気づく。サーキット音やチャイムやマリンバなどが演奏を奏でる。幸せな夢の時間もそこで終わり。極悪な現実が待っている。でも起きないとそれはそれで地獄だ、となんとか目を空ける。

しかし、ベッドから降りれない。ゴソゴソと布団の中で頭が覚醒するのを待つ。眠くてしょうがないが「寝たらもっと辛い」と思い込んで、なんとか意識を覚醒させようとする。上司に「寝坊したので遅刻します」というのは、寝坊よりも辛い。

携帯を見て、FacebookInstagramにコメントがないかを見る。そして、ベッドの中で30分ほど、うだうだ。7時45分に目覚ましがなり、ようやく私はベッドから降りる。目をつむりながらパンをトースターに入れる。その間に顔を洗い、戻ってきたころにはパンが焼けている。半目のまま、それを食べて、コーヒーを無理やり口に入れる。もう一度ソファーで気絶する。目を覚まそうと、テレビをつけるがそれどころじゃない。米国の選挙や日本の事故よりも私は自分の眠気の方が事件で。それでもなんとか這いつくばりながらトイレに行く。その頃にはもう8時15分になっている。ようやくやっと目が空くようになってくる。

毎朝、とてもつらい。これからも毎日、こんな日々を繰り返すと考えると、吐き気がするほどだ。「死ぬと、早起きしなくてもいいよな」とさえ考えてしまう朝の辛さ。

こんな辛い日々を他の人たちはちゃんと過ごせているのが信じられない。会社にいくと、皆そんな辛い思いなんてしてないかのようなすました顔をしている。私もそうだけど、それでも私は午前中はぼーっとしている。ポンコツだ。もしかしたら、みんなはそんなに辛くなりのかもしれない。もしかしたら私は「眠い眠い秒」なのかな、と思って友人たちに聞くと、みんなも「朝は辛い」と言っているので、みんな辛いのだろう。

明日の朝がこんなにつらいことを想像すると、寝るのさえも億劫になる。神様も手違いをしてしまったんではなかろうか。こんなにつらい経験を人にさせるなんて、バランスがあっていない。どんな幸せなことがあっても、翌朝はこの地獄があるなんて。幸せは朝までしか続かないってことだ。

これは人が担う原罪ではないのか。生まれてきたことの罪を償っているのではなかろうか。

この朝の辛さを通じて、人は生きるということを学んでいくのではないか。自然と対峙するサーファーのように、私は朝の眠気と向き合うスリーパーである。

もし次に生まれ変わったら、朝、起きない人生がいいな。

寝たらそれまでの人生がいいな。

夢を見ながらこの世を去るって、なんだか素敵じゃない。

病気の人も健康な夢を見て、不幸な方も幸せな夢を見て、人を憎んでいる方も怒りのない夢を見て。夢を見ながらがいいな。