寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

マレーシアの空港で待ち合わせ

車の中で奴を待ちながら、考えていた。汗がじっとりとTシャツに染みる。

考えていたのは、「うまく殺せるだろうか」というよりも、「私はどう殺されるのか」ということだった。殺すのはうまくいくだろう。警戒心のない男を殺すことは造作ない。毒殺なんて小学生でもできる。

問題はその後だ。彼らは「そのまま金をやるから悠々自適に暮らせ」なんて言うけれど、そんなのは嘘だろう。依頼主を知った私は恐らく殺される。空港でやるからには防犯カメラにだって映るだろう。そんな人間を彼らがほったらかしにしておくわけがない。

でも、他に選択肢なんてなかった。私がこの話を受けなければ、私の家族は殺される。何より、この依頼を聞いてしまった以上、殺される。

私は奴を殺すしかないのだ。

しかし、私は100%殺される、ときまったわけではない。1%は「もしかしたら」と考えてしまう自分もいる。もしかしたら大金をもらって、そのまま田舎で暮らせるかも。だから、錯乱しないのだろう。もし100%殺されるなんてわかっていれば、私はこのミッションをうまく遂行できないだろう。1%の可能性にかけて、私は奴を殺す。

殺される奴もかわいそうだが、仕方ない。そういうものなんだ。

でも馬鹿らしい。マレーシアでは、こんなにのんきな人たちがいるのに、1人の男は殺されて、そいつを殺した女も殺されようとしている。私も、のんきにクエラピスでも食べる人生を歩みたかった。

笑いを意味するLOLをあしらったTシャツを着たのも、ちょっとした皮肉だ。防犯カメラに映った時に、私は世界を嘲笑おう。こんな変な世の中で真面目に生きるやつらを笑い飛ばしてやろう。

手が震える。汗が冷たい。

Tシャツで汗を拭う。男が到着するまであと30分。