読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

笑顔

電車に乗っていた。前の座席に座っている人たちを見た。

みながみな、携帯かiPadを見ていた。1人は寝ていたけれど。

「携帯ばっかりみてる」なんてつまらないことは思わない。ぼーっと電車の天井を見ているよりも、スマートフォン2chまとめでも読んでいた方が楽しいと考える人がいたっておかしくない。

しかも、素敵なことに、彼らの6人のうち2人がニヤニヤしていた。LINEで素敵なやり取りをしていたのかもしれない。それともボケてで面白いボケを読んだのかもしれない。いずれにせよ、ニヤニヤしていた。

人がみると「気持ち悪い」と思うかもしれない。ただ、僕は「素敵だな」と思う。人の笑顔って素敵だ。人の笑顔を見ているとなんだか嬉しくなる。幸せのおすそ分けをもらったようだ。きっと彼や彼女たちはうれしいことがあったんだ。それって素敵じゃないか。

だから、僕はふと思った。電車の中で他の人を笑顔にできるともっといいんじゃないか。アメリカだったら地下鉄の中で楽器を演奏する人たちもいる。彼らは人を笑顔にする。もっとも、お金はせびられるけれど。

だから、僕はこっそりと変顔をしてみる。前の席の人たちは携帯を見ているので僕の変顔に気づかない。僕の変顔はどこにもたどり着かないまま、宇宙の藻屑となる。誰かが笑顔になってくれたらいいのに、と思ったけれど、誰も笑顔にならないまま、僕も苦心の顔芸は終わった。

はっと視線に気づき、右を向くと、斜め前の方に立つ20代の女性がこっちを見ていた。きっと僕の変顔をみていたのだろう。錦織がトイレ行きたいけど我慢している時のモノマネ顔芸をこっそり見られていたのに違いない。

残念なことは、その女性は僕の変顔を見て笑顔になったのではなく、顔を引きつらせていたということだ。むしろ僕は彼女を怖がらせてしまった。ごめんなさい。

人を笑顔にするのは難しい。次は錦織がホワイトデーに何を買おうかなやんでいる時の顔マネを習得することにしよう。