寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

嫌いなものに好きなものを組み合わせる彼女

雨の日だけ彼女はココアを飲んだ。

どうして雨の日だけ飲むの、と僕は聞いた。

「ココアはカロリーが高いから太るんだよ。だから雨の日だけ飲むの。そうすると雨の日が少し楽しみになるでしょ」

彼女なりの処世術だった。嫌いな雨の日を好きになるための。そうして、彼女は苦手なものや嫌いなものとうまくやりとりしていた。

雪の日は布団の暖かさを謳歌していた。風邪を引いた日だけ読む彼女が好きな漫画があった。仕事で疲れた後はマッサージに行くようにしていた。そうして、彼女は嫌いなものと好きなものをくっつけて、うまくバランスを取っていた。

僕の駄目なところもそうやって彼女は受け入れてくれていた。僕はよく遅刻をする。そして遅刻をするたびに「スタバのラテごちそうね」というルールを彼女は作った。それからは、彼女は僕の遅刻を咎めなくなった。30分以上の遅刻はスコーン付きという新しいルールはできたりしたけれど。いままで10杯以上はおごっただろう。

だから、彼女の別れ話は、僕にとって唐突だった。僕の駄目なところも彼女ならうまく受け入れてくれると思っていたから。

手を震わせながら彼女は別れ話をした。僕は「別れたくない」と言ったけれど、彼女は頑として譲らなかった。彼女の優しさに甘えて、僕は浮気を繰り返していた。2回目までは許容してくれたけど、3回目はもう許してくれなかった。今回だった。

いまになって思い返すと、彼女が怒った時が1度あった。長野に旅行に行って、雨が降った時だった。1日目は彼女は「じゃあ今日は宿でゆっくりしようか」と。2日目も雨だった。そして3日目も雨だった。いきたかった登山ができなかった。

3日目の前で、彼女は「雨は嫌い」といって部屋を出ていった。そして、傘を捨てた。「雨なんて認めてあげない」と言った。

ココアを飲みながら、彼女のその横顔を思い出した。