寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

忖度してよ

「あ、違う」と気づいてしまった。いつもと違う。

彼女が僕の家から会社にでかける時、彼女は「いってきます」と出かける。その時に彼女は僕に軽くキスをして出かけていた。でも今日はそれがなかった。「たまたま」と見過ごしそうなソレだったけれど、そこから、色々と気になる記憶が出てきた。最近のベッドの上でのやり取りもなんだかノリが悪い。「映画に行こう」といっても歯切れが悪い。普段よりもスマホを触っている。

彼女は変わってしまった。

そもそも彼女とはアイコンタクトで始まった。僕は当時、彼女がいた。彼女には夫がいた。

でも、会社で初めて彼女を見かけた時に、僕は思わず息を呑んだ。それほどタイプの女性だった。僕が彼女をじっと見つめていることに彼女は気づいた。そして微笑んだ。それから恋は始まった。

でも。

でも、結局、アイコンタクトで始まるような恋愛は結局、アイコンタクトで終わる。キスをする時に、普段と異なり少し視線をそらす。彼女は僕の目をみない。それがすべてだ。

恋をすると目が合う。そして、目が合わなくなると恋が終わる。

テレビでは「忖度、忖度」という言葉が発せられる。僕も、彼女の気持ちを忖度して、おとなしく別れようか。このまま、僕が彼女に連絡をしなければ、彼女も僕に連絡をしてこないだろう。彼女は自分の家庭に帰るだけだ。

でも、彼女も僕の気持ちを忖度してくれてもいいんじゃないのか。僕に飽きたならしょうがない。それは2人とも悪くない。でも、それは口でちゃんと言って欲しい。目線をそらさずに。

「別れよう」の一言で良いのだから。僕たちは政治家じゃないのだから。