寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

パーとなった航空券

ミキとの旅行がパーになった。

ハワイがパーに。

その事実を知ったのはニュースだ。ニュースでチケットを買った代理店の倒産が報道されていた。でも「なんとかなるだろう」と思っていた。でも、なんともならないことを昨日、知った。1%くらいしか返ってこない。

彼女にプロポーズする予定のサプライズ旅行だった。

ゴールデンウィークにドライブいこうよ。ちょっと予定空けておいて」とだけ言っていたから、彼女はハワイの予約をしているなんて知らない。

彼女がいきたいといっていたハワイに行く予定だったなんて、彼女は知らない。

だから、僕は「旅行がパーになっちゃった」なんて彼女に言えない。かっこわるくて言えない。それに、それを言ったところで彼女を悲しまさせるだけだ。

どうしても足りなかった2万円は借金までして買ったチケットが無駄になった。どうしてもホテルをもう1ランクあげたかったんだ。

地球の歩き方も無駄になった。ホノルルとワイキキの違いも勉強したのに。

2年貯めた貯金を使い切っちゃったから、もう1度貯めるには2年かかるだろう。

脱力しかなかった。お酒を飲んで号泣した。翌日は真っ赤な目で会社に行ってしまった。思わず同僚に心配されたけれど、旅行がパーになったなんて彼らにも言えない。同じ会社のミキにバレてしまうから。

そんな出来事を今、しみじみと思い出す。

あの後、僕がとった行動は正しかったと5年経った今なら言える。結局、あの後、ハワイのチケットを取り直した。今度はHISで。

消費者金融で20万円以上の借金をして。

でも、人生に負けるのが嫌だった。旅行会社の倒産くらいで自分の人生を変えられたくなかった。だから、僕は借金してでも、ハワイにいってやろうと思った。

生きていると、トラブルは起こる。今回のような代理店の倒産は珍しいとしても、事故にあったり、あるいは、詐欺にあったりと人生は常に順風満帆ではいられない。だから、たまたま落ちていた石ころにつまづくのはいやだった。石ころを蹴飛ばしてやりたかった。

その分、サプライズでハワイの航空券をみせた時の彼女の顔を見れて嬉しかった。2倍嬉しかった。ホテルも予定していたグレードよりさらに上げた。

それから3年間は退職後のバイトで時間が全然なかったけれど、でも、あのハワイがあったからこそ、今、僕はミキと一緒にいれる。それに、また今度、トラブルがあっても乗り越えてみせるぞ、と思える。

30年後くらいに老後の笑い話になるといいな。「実はあの時に泊まったハワイのホテルのグレードは、もう1段階低い予定だったんだよ」って。