寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

開かない息子の携帯

ニュースで、亡くなった息子さんのiPad解除がAppleに拒否されたというニュースがありました。もっとも拒否されたわけではなく色々と手続きが必要という話のようですが。

それを聞いて、それは可哀想なことですが、それでも必要な書類を用意すれば開くことができるでしょう、と思いました。私の息子の携帯は書類を用意してもみられないのです。

だから、息子がガラケーではなくiPhoneを使ってくれていたら、と思うことは何度もあります。今も、毎晩パスワードを順番に入れていっていますが、3年経った今もまだ空いていません。8桁ですから、1億通りを試さないといけないのです。

でも、いつか開くと信じています。そう思いながら毎晩パスワードを入れています。いつか息子がみていた世界を見れるのだと。

息子はあまり積極的に友達と遊ぶ子ではありませんでしから、多分、メールはあまりしていなかったんだと思います。メールも慣れていませんでした。私とメールをする時でさえ、句読点を丁寧につけていて、自分の息子ながら、微笑ましく思っていました。

どういうサイトをみていたのかわかりませんが、サッカーが好きだったのでサッカーのサイトはみていたのでしょう。あとは、写真はよく撮っていたようです。道の空き缶やマンホールの蓋など、よくわからないものを撮っていましたが、息子なりの思いがあったのでしょう。

そんな息子の思い出が詰まったガラケーがここにあります。こんな手のひらに乗る距離にあるのに、その中身を見れない。最初はそれが苦しかったのです。思わず叩いたりもしました。もし、これがノートとかならば中身を見れたのに、デジタルだからパスワードは開けないのです。

でもデジタルでもいいところもあります。最後に息子が私に送ってくれたメールを何度を何度も見返すことができます。きっとそれが紙の手紙だととっくにボロボロになっているでしょう。だからデジタルで良かったな、と思います。

息子の携帯に何が入っていると思いますか。毎晩、想像しながらパスワードを入力しています。息子の気持ちを考えると、みない方がいいのかな、とも思っています。パスワードで開いてから、そのことは考えようと思います。

今でも回線のお金は払っています。ですから、たまにメールが届きます。きっと業者からのメールだと思いますが。それでも、たまに受信をして携帯が震えるのを見ると、まだ息子が生きているように思えるのです。

業者からのメールでメールボックスが一杯になるのだけが心配ですが。