眠る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです。最近テクノロジーをテーマにしたものに凝ってます)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます あとスターも励みになります!

宮益御嶽神社にて

学校でなぜ手のつなぎ方を教えてくれないんだよ、と思った。微分フランス革命よりも重要だろうよ。

今日は2回目のデート。渋谷のデート。電車で40分揺られて渋谷につく。

まずはセンター街を散歩。そして、そこから少しはずれたところにあるゲーセン。UFOキャッチャーとコインゲーム。そして、プリクラ。プリクラの時に少し手をつなげるかと思ったけど、駄目だった。「手をつないで」っていうポーズがあればよかったのに。

そこから、ぶらぶらと渋谷を歩く。おしゃれなカフェや喫茶店を眺めながら歩く。

僕はみっちゃんの手をつなぎたいけど、人が多くてダメだ。もっと人が少ないところじゃないと。

座りたいね、と彼女が言う。1時間以上も歩きっぱなしだ。事前に調べておいたカフェに向かう。

「コーヒーが美味しいカフェらしいよ」と僕は言う。

15分歩いて向かったそのカフェは満席で。

しょうがないから、他にカフェを探す。でもエクセルシオールも満席で。週末だからかどこも混んでいる。

「あ、神社だ」と彼女が言う。

渋谷に神社なんてあったんだ。「宮益御嶽神社」と書いてある。いってみよっか、とみっちゃんが言う。

急な階段を登った先には、神社があった。お賽銭を入れて、お願いごとをする。「今日、彼女と手をつなげますように」。

もし、この神社の境内にベンチがあれば、手がつなげたのだけれど、ベンチはない。残念だ。

そして、神社を後にして急な階段を降りる。すると、隣のビルが目に入った。

そこは、どこかのオフィスの休憩所のような場所だった。おばさんが制服で座ってコーヒーを飲んでる。土曜日なのに出勤してる。そして、みんなが休日を楽しんでいる中で、働いている。

僕は、なぜかそのおばさんに「何してんの。早く手をつなぎなさいよ。私なんて休日出勤してるのに!」と言われているような気がして、思わず、彼女の手を繋ぐ。

「危ないから」

みっちゃんは少し驚いた顔をしたけれど、手は離さずにいてくれる。僕たちはそのまま渋谷の雑踏に手を繋いだまま出ていく。指の絡ませ方がわからないけど、とりあえず繋ぐ。

あとで、あの神社にお礼にいかないとな、と思った。お願いごとを早速叶えてくれるなんて。でも、あの神社は恋愛にも効くのかな。

「みっちゃんは、何をお願いしたの」と僕は聞く。

みっちゃんは少し笑って、手を強く握り返してきた。