眠る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです。最近テクノロジーをテーマにしたものに凝ってます)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます あとスターも励みになります!

ハッピー!

ある繁華街から20分ほど離れた落ち着いた住宅街にあるビストロのお話。

そこを経営するのは、老夫婦の2人。50代かもしかすると60代かもしれない。目玉はオムライスで、半熟さが売りで890円。夜よりもランチの方が活気がある。テーブルが5席ほどの小さいお店だ。

その店では、奥さんがフロアに出て、旦那さんが料理をする。奥さんがオーダーを取って旦那さんに伝える。料理ができると旦那さんは「料理できたよ」という。そして、奥さんはそれに合わせて「サンキュー」と言う。

奥さんがるテーブルが「すいません」と言っても、奥さんが他のテーブルに忙しくて、気づかない時がある。旦那さんは「2番さんがお呼びだよ」という。すると、奥さんはそれに合わせて「ハッピー」という。

このやり取りを見ると「なぜ英語なのだ」という不思議な気持ちを頂くなる人もいる。しかし、少しの嫉妬を感じる人もいるだろう。夫婦仲が悪い人にとっては、彼らの仲の良さが羨ましい。まるで阿吽の呼吸で。

しかし、何より素敵なのは「2番さんがお呼びだよ」の応答が「ハッピー」ということだ。「ハッピー」という響きはなんだか恥ずかしい。馬鹿っぽい。でも、「お客さんが呼んでいること」に対して「ハッピー(幸せ)」と叫ぶのは、空気を暖かくする効果がある。

忙しい時こそ「はいよ!」という掛け声ではなく「ハッピー」という声が飛び交う。それは、せっかちなお客さんの心を少しは穏やかにするだろう。ハッピーの響きが持つ、少しの気恥ずかしさとともに。

仕事でも、何かのお願いを受けた時に「ハッピー」と叫んでみようかな。