寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

彼女が飲んでいたコーヒー

コーヒーが好きだった。だから、デートではよくカフェ巡りをした。

目黒川沿いのカフェや長野の山奥にある森林浴が気持ち良いカフェ、虎ノ門にできたビルの上空のカフェ、新橋の隠れカフェ。たくさんのカフェをメイとまわった。

僕は、そこで、カフェラテを飲み、エスプレッソを飲み、ブレンドを飲んだ。

メイはいつも「サカキ君と同じものを」と頼んでいた。僕は「好きなものを頼めばいいのに」と思ったけれど、口に出すことはしなかった。自分のものと同じものを頼まれて嫌な気はしないもので。

それから1年、彼女とは付き合って、そして、別れた。理由は僕の浮気だった。よくあるような浮気と喧嘩だたt。社会人1年目の恋愛としては1年は、少し短い期間だったかもしれない。

それから数ヶ月後だった。メイと共通の友人とお茶をすることになる。高架下のサードウェーブ系のカフェだった。

「ここのカフェはメイとも来たよ」

と僕は会話に出す。すると、友人は言う。

「え、メイはコーヒー飲めないのに、ここにきたの?」

僕は混乱をした。1分近く言葉を失っていた。

メイはコーヒーを飲めないにも関わらず、僕がコーヒー好きだから、コーヒーに付き合ってくれていたのだ。きっと味の違いなんてわからないから、なんでもよくて僕の飲んでいるものに合わせていたんだ。

今までの記憶がフラッシュバックする。メイとカフェで飲むシーンを。そこで、メイはどのような気持ちでコーヒーを飲んでいたんだろうと思う。

僕は思わずメイにラインをする。

「コーヒー嫌いだったんだって?気付かずにごめんね」

1時間後に既読になり、翌日、返信が返ってくる。

「コーヒーは苦手だったけど、あなたがコーヒーを飲んでいる時の笑顔は素敵だったよ。あなたの笑顔を見るためならば苦いコーヒーも飲めたよ」

僕は、そのLINEをみて、ダブルのエスプレッソを飲んだ時よりも苦い表情をしていただろうと思う。

きっと、メイはこれ以上の苦い思いを飲み込んでいたんだろうな、と想像した。もう僕はエスプレッソは飲めそうにない。