眠る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです。最近テクノロジーをテーマにしたものに凝ってます)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます あとスターも励みになります!

アドバイス

なぁ、わかるだろ。

人はアドバイスを聞けないんだよ。

もうそういう仕組みになってる。そういう身体になってるんだよ。他人のアドバイスを聞いた殊勝なやつは周りにいるか?いないだろう。要はそういうことなんだよ。人はアドバイスを聞かない。何度でもいうよ。人はアドバイスを聞かない。みつをもきっといっているよ。人はアドバイスを聞かない、人間だもの。

不倫をやめろといってもやめない。無駄遣いだから節約しろといってもできない。あの人は悪いやつだからといっても自分だけは信じて騙される。

なぜか。人は自分の意思決定を過大評価しているからだよ。自分は正しい、自分はものを見極めることができる、自分だけが理解している。

でもそれはそれでしょうがない。そういう自分の意思を信じれないと、人は前に進めないんだよ。「目の前の地面が落とし穴かも」って恐れていたら、一歩を歩けないだろ。そういうことなんだよ。人は自分が立っている地面を信じている。そうやって生きてきたんだよ。

でもな、人がアドバイスを聞くときが2つだけある。どういう時かわかるか。

1つは、自分自身が実際にそのアドバイス通りのことを体験した時だ。「ギャンブルなんてやめておいた方がよい」と言われた男は、実際にギャンブルで痛い目を見て、やっと「あの人は正しい」と理解する。

そして、もう1つは、自分もそう思っている時だ。「太ってるから夏までにやせなよ」と言われた女は、自分自身もそう思ってるから、ダイエットをする。

逆にいえば、それ以外の時はアドバイスなんて意味がない。

だからもしお前が人にアドバイスをする時は、最後の結論にアドバイスをしちゃだめだ。その最後にいく手前へのアドバイスをするんだ。

たとえば不倫なら「最後は苦しむのはあなたよ」と言っても、気づいた頃には手遅れだ。それよりも「たとえば、日曜日にLINEの返信が遅いことはない?それにいらいらしない?それって他の人より不幸せだよ。不倫ってやめなよ」というふうにアドバイスするのがいいんだよ。崖に落ちる手前でアドバイスするんだよ。

崖から落ちている車に「あぶないよ」といっても意味ないんだよ。運転する前の運転手に「あぶないよ」といっても意味ないんだよ。坂で少しスリップした時に「危ないでしょ、やめときなよ」ってのがいいんだよ。

ギャンブルなら「破滅するよ」ではなく「3回やってみなよ。それで勝越したら続ければいいし、だめなら、辞めたほうがいい。確率では7割の確率で損するから」とアドバイスをするんだよ。

そうすると最悪の手間で気づく。

というこのアドバイスもお前さんは聞かないだろうな。自分自身で、これを体験しない限り。