寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

初めての満員電車

なんだこの破廉恥な空間は。こんな淫靡な空間が現代社会の東京で存在していいのか。

それが私の初めて満員電車に乗った時の感想だった。いきなり隣の人とすごい勢いでくっつく。もはや体が半分浮くんじゃないかという勢い。横からの圧力がなぜか↗にベクトルが伸びており、私の小さい体は浮く。後ろの巨大のお兄さんの背中がもはやカタパルトのようで、私はもうろうとする意識の中、宇宙空間への飛び出しを想像していた。もし、宇宙空間へのジャンプ台があるならば、無重力だから永遠に飛んでいってしまう。どう勝負を付けたらいいんだろうか。

満員電車は匂いはおもったよりしなかった。加齢臭は確かに漂っていたけれど、それよりも隣のお姉さんから漂うジャスミンだかジャコウだかの匂い(想像)が鼻孔をくすぐり、これはまたなんとも破廉恥な、と思った。私はその少し胸元の開いたニットを来ているお姉さんとも左腕を接していて。心持ち彼女の体に触れていて。それはそれは、普段、知らない人との接触なんてしまいから、興奮した。「クラブか」とクラブにいったこともないのに、クラブのシーンを思い出し、レニークラビッツを頭の中で奏でていた。満員電車は、これは刺激的すぎる。田舎者にとっては、これはハプニングバーだ。もし目の前にイケてるお兄さんがきて、くっついてしまって、間違ってまたの間に足が入ってしまったらどうするんだろう。うっかり受精さえしてしまうかもしれないではないか。一生の運をそこで使い果たすかもしれない。こんな満員電車に乗る人は、毎日、そのような20連ガチャでSRRを惹くが如くの勢いで満員電車に乗っているのか。それはそれで楽しそうだ。もっともはずれな人とくっつくと、(˚ ˃̣̣̥ω˂̣̣̥ )になりそうだけど。

人とのふれあいを求めている人はここにいくといいのではないか。は!動物とのふれあいを求める人もいることを考えると、電車に動物を放し飼いにすればいいのではないか。そうすると、OLや女性も「やったー今日は辺り。カビパラとくっつくわ」と喜ぶことができる。チンチラだとはずれ。なんとなく。スーツどろどろになるけど、まぁそれはご愛嬌ということで。

こんな満員電車で身動き取れないのに本を読む人はもはや修行僧か。手が思い上に、足腰を鍛えて、さらに本の情報を頭の中に入れ込む。私には、それは、滝の水に打たれて念仏を唱える高僧にさえ見える。光陰さえ刺しているように思う。まぁ単なる車窓からの光なんだけど。しかし、確かにこれは酔っぱらいが入ると、一気にバイオハザードモードになるね。いかに彼から逃げるか。これは自分との戦いが試されるよ。本当は今すぐでもこの嗚咽する物体から逃げたい。でも体動かせない。次の駅で降りるか。はたまた彼が嘔吐しそうになったら指でも突っ込んで吐瀉物を咳止めるか。あるいは、脳天かかと落としをかまして吐瀉物の落下を上部ではなく下部からにして、被害を最小限に留めるという方法もあるだろう。いずれにせよ、戦場の判断が求められる。

なんと満員電車とは人間力を鍛えるものだったのだ。東京人が仕事ができるのは、この満員電車のお陰ではなかろうか