眠る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです。最近テクノロジーをテーマにしたものに凝ってます)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます あとスターも励みになります!

2016-08-01から1ヶ月間の記事一覧

自分の掛け値

情熱大陸を見ていた。すると、リオのカーニバルで踊る日本人女性をテーマにしていた。 工藤めぐみさん、という女性だ。リオカーニバルで優勝候補となる競合チームで唯一の日本人ダンサー。19歳の時に、言葉もしゃべれないままリオにダンス留学をし、いまに至…

イタリアの借り

イタリアの震災のニュースを見ていた。もし、この震災がイタリアのものじゃなければ、立ち止まらなかったかもしれない。しかし、イタリア、と聞いてミドリの脳裏に引っかかるものがあった。 イタリアの田園都市の古い遺跡が地震で壊されている風景を想像した…

台風の恋

台風がなぜ日本を襲うのだろう、と考えていたのだが、もしかすると、台風は恋をしていて、恋人を探しているのではないか。山崎まさよしの如く「こんな場所にいるはずもないのに」とつぶやきながら、日本列島を縦断しているのではないか。 あるいは、恋人候補…

あかんとこ

- ミヤモト、お前は仕事ようやってくれてるけど、1つアカンとこがある。どこかわかるか? - アカンとこありますか。わかりません。声が小さいところですか。 - 声小さいのはアカンとこやな。そやけど、もっとアカンところがある。そのアカンところ直したら声…

パンツ時計

2016年秋、画期的な商品が発売され、日本中の話題となった。ポケモンGOを超えるほどの反響であった。 その商品は「パンツ時計」という。時計にパンツがついているという商品だ。 これは、「時間を調べるのは携帯で」という人が増え、時計が売れなくなったこ…

太陽としての女性

女の友人と食事をしていたんだよ。友人といってもここ数年の仲でそこまで濃い関係じゃない。身体の関係はない。ただ、お互いボディタッチがあるくらいの親密さはある。数ヶ月に1回は二人で食事を食べるような仲。僕に恋人がいなければ、どうかなっていたかも…

ガーリックバターの魔力

ガーリックバターのことを知らない人は、人生を損しているといってもいいだろう。こんなに芳香ながらも素材を活かすソースを私は他に知らない。 にんにくをみじん切りにする。すりおろしてもいいがみじん切りくらいの無骨感が好ましい。バターの量にもよるが…

独り

雑踏の中を歩いていると、家族連れや学生たちが目に入る。あるいは、居酒屋のメニューを見る会社帰りの男たち、どこを目指すのかわからないけど小走りでかけていく少年たち、夜がきただけでも笑える女子高生たち。 そんな中でひとりで歩いていると、孤独が増…

「夢と挫折」が陽の目を見る日

先日の topnotch.hatenablog.com という記事が以下の「「夢と挫折」受賞者(10名)」に選んでいただけたようです。 blog.hatenablog.com 自分のちょっとした体験談を抽象化して膨らませた話だったので、なんだかうれしいです。挫折が陽の目をみたようで。 あ…

LINEの返事屋2

最初のお客は、カオルの知り合いだった。 「ねぇ、ねぇ、私のバイト先でミサの話をしたら、先輩が相談したいことがあるっていうの。どうかな?」 私は特に乗り気でもなかったけれど、いち大学生としてお金には困っていたので、その点で魅力的だった。 相手は…

LINEの返事屋

私が、「LINEの返事屋」を始めたきっかけはカオルの助言だった。「ミサのアドバイスって本当に頼りになる。お金をとれるんじゃない?!」というものだった。 そのカオルの発言のきっかけは、私がカオル自身を助けたことにある。 当時、カオルは、恋人とのLIN…

高校野球

子供の頃は親が高校野球を見ていた。それを見て私は「大人たちのスポーツ」のように思えていた。プロ野球との違いはわからず、何が良いのかわからなかった。 高校生になって、いつしか彼らと年を並べる。その頃は、同じ世代の人の戦いとして見るようになった…

ベーコンエッグの本気

プラチナ通りにあるそのビストロには看板がありません。それでも、普段から業界の人たちで賑わっています。朝まで美味しい料理を食べられるそのお店は業界人にはありがたいのでしょう。蔦が絡まるウッディな扉を目印に人々が集まります。 その店の名物の1つ…

英雄が負ける時

その日はなんだか眠れなくて。ベッドに転がりながらリモコンでテレビを付けるとオリンピックがやっていた。 ああ、今日はレスリングか、と思いだす。ニュースでやっていたことを思い出す。 ぼーっとテレビを見続ける。音量は少し下げて。決勝。肘をついてタ…

タイムマシン

「わぁ、久しぶり」 視覚で認識が先か聴覚が先か、いずれにせよ、一瞬で記憶が蘇る。思わず笑みが溢れる。無意識の笑みだ。 思わずバーカウンターにグラスをおいて歩み寄る。そしてお互い無意識に手をあわせる。黒いカクテルドレスを着ている彼女は、とても…

1つだけの

三軒茶屋の三角地帯では平日というのに、多くなサラリーマンたちが酒を飲んでいる。こんなに暑いとビールも飲みたくなるだろう。 ある焼き鳥屋のテーブルでは、3人が赤ら顔で楽しそうに話をする。20代の女性が1人。30代の男性が2人。テーブルの上にはつくね…

台風で思い出すこと

昔の恋人は、台風がくると、そわそわしだす人だった。喜びではなく、なんだか「非日常」に対する高揚感を感じているような。それは、小学生が雪の日にテンションがあがるのと同じことなのかもしれない。 彼は台風が来ると、屋内に閉じこもり、ニュースやツイ…

お酒という毒

ある飲食店が、焼酎と間違って、手洗い用のアルコール製剤を客に出してしまっていたらしい。 大変だな。飲んだ人も気づかないものかな、とノボルは思う。酔っ払ってると気づかないものなのかもしれない。 でも、そもそも、とノボルは考える。お酒自体が「本…

価値観が合う彼

初めて人と付き合ったのは大学生の頃だ。どこにでもあるような話で、大学の同級生。最初は何も思わなかった。けれど、会う回数が重なるうちにお互い惹かれ合う、というような。 彼とは多くの価値観があった。一緒にフジロックが行くほどロックが好きだったし…

距離と気持ちの相関性

地元に続く電車に揺られながら考える。 距離が離れると、心も離れるような気がする。遠距離カップルがうまくいかないのは、そういうことだからだろうか。 車窓からはのどかな田園が見える。東京では見かけない畑だ。自分がタイムスリップしてしまったかのよ…

ゴジラを見た後

「ゴジラ、面白かったね」 「面白かったね」 「もし、本当にゴジラが出てきたらどうする?」 「車で逃げる?」 「でも渋滞になっちゃうよ」 「そうだね。地下とか?」 「いいね。地下鉄?」 「何日こもらないといけないかわからないから、食料があるところが…

もっと渇きを

「食事の最高のスパイスは、空腹だ」とは言うように、飲み物の最高のスパイスは渇きだろう。 喉の渇きは、生死にも直結するため、よりビビッドに水分のうまさを感じることができる。 学生の頃の部活の休憩で飲んだ水のうまさは、一種の快楽でさえあった。あ…

ヒマワリの花言葉

ヒマワリの花言葉は「憧れ」や「崇拝」だという。 なぜか? ヒマワリの姿は、太陽に似ている。ヒマワリは太陽に向かって咲く。つまり、ヒマワリは、太陽になりたくて、そして憧れる花なのだ。 ヒマワリにはなれないけれども、目指して目一杯咲く花なのだ。 …

真夏のタクシー

暑い日差しに負けてタクシーに乗る。タクシーは渋滞に捕まり、のろのろと走る。 社内で今日中に作らないといけない資料の構成案を考える。窓の外では蜃気楼が経っている。今年の夏は暑い、とは本当だったようだ。 考え事をして、気がつけば渋滞が過ぎていて…

泡のような恋

人は「海の青」に海を見る。つまり、「紺碧の海」「コバルトブルーの海」「透き通るような青」と、海を青色の形容詞で呼ぶ。すなわち、人はその青色の中に海を見る。 ダイバーは、別のものを海に見る。魚、である。色とりどりの熱帯魚を見るために潜る。それ…

釣り

申し分のない相手だった。それなりの給与で、それなりの身長と外見で。何より私を存分に愛してくれる。ただ、刺激はない。でも、結婚相手に刺激を求めるものなのだろうか。ここ数ヶ月はそんな葛藤を繰り返している。 付き合って2年、私も今年で30になる。婉…

ゼンマイ仕掛けの私

この仕事になった時から服装を変えた。強そうな服を着るようになった。ふわっとしたスカートや淡い色のシャツは避けて白のシャツや濃い色のジャケットかタイトスカート、パンツで全身を固めた。クライアントに舐められないように、服装には油断をしなかった…

ルンバは掃除機ではない

ルンバの快楽というものを知っているだろうか。 快楽の前に、まず、人類がいかにルンバと共に生きているかを話した方が良いだろう。人はルンバと共に生きてきた。聖書にも「かの地からきた、地をはうもの」として記載されている。 ルンバはまず掃除をするも…

八百屋での収穫

ミドリが初めてしたバイトというものは、コンビニだった。中学生の頃だ。もちろん法律で禁止されているので公のバイトではない。 親戚の叔父がやっている八百屋にお手伝いという形で潜り込んだのだ。ミドリはレジをした。時に野菜を並べることもあったけれど…

麦茶が似合う彼女

- コンビニに寄って帰ろうよ と彼女が言う。初夏のビアガーデンは酔いを促進させる。コンビニで冷たいものを飲んで帰ることには賛成だ。 近所のファミリーマートは普段と同じ日常で。この変わらなさが心地よい。店員の移り変わりだけは多いけれど。 白いワン…