眠る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです。最近テクノロジーをテーマにしたものに凝ってます)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます あとスターも励みになります!

2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

グラスをあげておろすまで

先日、以下のようなツイートを見た。 ドトールでアイスコーヒーを注文して、受け取ると同時に返却口のほうへ歩きながら飲み干し、グラスを置いて「ごちそうさまでした」と言い去っていくサラリーマンを見た。グッときた。 — ウイ (@ui0723) 2017年3月8日 読…

失恋のプロ

ミユキは自分のことを「失恋のプロだ」と言っていた。少しの自嘲も込めて。 恋愛体質だからすぐに恋愛する。でも、その分、別れも多い。いままで20以上の別れを経験してきた。たいていにおいてミユキが振られてきた。 だから、「失恋には慣れてるの」という…

ハッピー!

ある繁華街から20分ほど離れた落ち着いた住宅街にあるビストロのお話。 そこを経営するのは、老夫婦の2人。50代かもしかすると60代かもしれない。目玉はオムライスで、半熟さが売りで890円。夜よりもランチの方が活気がある。テーブルが5席ほどの小さいお店…

男の香水はどう思う?

「男性の香水ってどう思う?」と、男が聞く。 女が答える。 「いい匂いだったらいいけど、きつすぎると嫌かな。あと甘い匂いとかは苦手かも」。 表参道の全部で30席ほどのイタリアン。店の端の6人がけのテーブルでその会話は繰り広げられる。 「柔軟剤の匂い…

食べ物を密度で選ぶ女

レイコは、サラダバーでトウモロコシやツナといった重いものばかりを取っていた。レタスやカイワレのような葉っぱものには見向きもせず。 ある時、「葉っぱが嫌いなの?」と聞いたことがある。レイコは言う。 「レタスとかは食べた気がしなくて。やっぱり密…

ズッキーニの茹で時間

はじめて会った時の自己紹介は「私、ズッキーニみたいって言われるんです」という言葉だった。 ズッキーニはウリ科の食べ物で蛋白な食べ物だ。かぼちゃなどに比べて味が薄い。それゆえに、どのような食材や料理にでもあう。 そんなズッキーニみたいに、誰と…

金曜日の過ごし方

会社の飲み会で、話は恋愛に向かう。 1人の男が懇意にする女性がいる。今まで3回ほど食事に行った。前回は金曜日のデートだった。しかし、何もできなかった。ようやく女性の過去の恋愛の話が話題にでた程度だ。 男はその女性が気になっている。しかし、女性…

お店にまつわるエピソードを巡る冒険

彼はレストランを選ぶのが好きだった。そして、選んだレストランに行くと、必ずお店にまつわるエピソードを話してくれた。 - この松見坂のバーは、歌手の福山さんがオーナーという噂があるんだよ。本当かどうか知らないけど、雰囲気のあるバーだよね。ユキち…

ホテルのバーへ行け

私が、ニューヨークに一週間の旅行をしていた時の話だ。 その時に、日本人のミチヨさんという方と出会った。同じ宿の部屋だったのだ。ダブルベッドが2個あるシンプルな部屋。いわゆるドミトリー。そこで私はミチヨさんと出会った。 カールスバーグを共用部の…

ブルゾンちえみのメッセージが持つパワー

「「ブルゾンちえみ」が圧倒的な支持を得た理由」という記事を読んで、ある友人の話を思い出した。 彼女はシングルマザーで娘がいる。13歳。思春期だ。 その娘とお風呂に入っていると、娘から教えられる。 「彼氏と別れた」と。付き合っていたというのは、数週…

野球部のマネージャーの彼氏は誰?

野球部のマネージャーで、アイコという女の子がいた。かわいい女の子だった。今の子たちには伝わらないかもしれないけれど、タッチのミナミのような、少し勝ち気のある女の子だった。 もう1人、タカコというマネージャーもいたけれど、彼女は男勝りなキャラ…

あなたは沈黙を楽しめる?

「沈黙を楽しめる人」と彼女は言った。 僕はその言葉がズシっと胸に響き、意図せずに沈黙を生み出してしまう。 それは、「どういう男性が好きなの」と聞いた質問の回答だった。よく聞くような「筋肉ある人」「背の高い人」「面白い人」とは違った回答だった…

結婚はポーカー?ルーレット?

「結婚て、Winner takes allじゃん。最後の総取りじゃん」 と、イーピンを切りながらタロウが言う。 「つまりさ、人生では何人かと恋愛するでしょ。でも、最後には1人の人としか結婚しない。少なくとも日本ではね。 そうすると最後に結婚した人だけが幸せで…

絶望とローズマリー

つまらない会食の店を出ると雨。朝の天気予報では雨なんて言っていなかったのに。傘はない。 お店の傘を借りて、お客さんをタクシーに乗せて見送る。そして、今日は、私もタクシーで帰ろう、と思う。 月曜日からくたくただから、少しの贅沢。領収書は通るか…

宮益御嶽神社にて

学校でなぜ手のつなぎ方を教えてくれないんだよ、と思った。微分やフランス革命よりも重要だろうよ。 今日は2回目のデート。渋谷のデート。電車で40分揺られて渋谷につく。 まずはセンター街を散歩。そして、そこから少しはずれたところにあるゲーセン。UFO…

自動運転は事故は防げても悪意は防げない

まさか、「そんな偶然が」という思いだった。 その日、私は、40代のお客さんの接客をしていた。自動運転カーの試乗をしてもらい、私は助手席で話をする。実際に乗ってもらって、購入を後押しする。 運転中に「ブレーキを我慢してみてください」という。信号…

革命は食事の後で

パスピエさんというアーティストの歌に「ヨアケマエ 」という歌がある。 その歌で、とてもセクシーな歌詞がある。 革命は食事のあとで というフレーズ。 文脈はよくわからない。ただ、そのフレーズ単体が持つパワーは圧倒的だ。 食事の後に行う革命。それは…

迫りくる尿意との戦い

「空気読めよ」と、これほど強く思ったことはない。 私は目で「トイレ行きたい、トイレ行きたい」とアイコンタクトを送る。すっと目線をトイレに送る。カウンター席の端にある扉に目を送る。 でもこいつは気にせずひたすら喋る。私に席を立つスキを与えない…

現代の幽玄

「幽玄っていう単語を使いたいの」と彼女は言う。 僕はコーヒーを一口すするふりをして、正解の回答を探す。なんと答えればいいんだ。 「幽玄ってどういう意味?」と僕は聞く。 彼女は嬉しそうな顔して説明を始める。どうやら正解だったようだ。 「幽玄って…

シワ

湯船で彼女が椎名林檎の歌を口ずさむ。 あなたはすぐに写真を撮りたがる あたしは何時も其れを厭がるの だって写真になっちゃえばあたしが古くなるじゃない いい歌詞だな、と思った。確かにな、と。 写真を撮ると、その写真の彼女は、過去の彼女だ。古い彼女…

沖縄の海

「自殺するくらいなら、全財産持ってラスベガスにいって一勝負して失敗してから考えればいいのに。勝てば自殺なんて考えなくなるだろうし」なんて不謹慎なことを小学生の頃に思ったことがある。 しかし、それから20年以上経って、ようやく理解する。死にたい…

桜の季節

ちょうど付き合い始めたのも桜の季節の頃だった。 その頃は散る桜に「これからの暑い季節」を予感し、散る桜にさえも心を踊らせたものだ。 でも状況が変われば桜の意味も変わる。別れ話の後では、散る桜が我々の関係性のように見えて切ない。 隣の女性をふと…

花見の席

もう少し早くくればよかった。 自分たちの花見の陣地は既に満席に近く、端しか空いてなかった。その端に座り、メンバーから配られたビールを飲む。 隣は大学からの友人の男性2人。大学時代で同じ時間を過ごした仲間だ。久しぶりでも、久しぶりの感覚を気にせ…

送られなかったメール

蒸発するように消える、という比喩は比喩でなかったんだ。ある日、帰ってきたら、その部屋にもう彼女の姿はなかった。 そこに、飲みかけの珈琲カップがあった。脱ぎっぱなしの靴下はなかったけど、財布や携帯はなくなっていた。 つまり、自発的に出ていった…

花屋の花は見るためだけに使うものではない

花咲く花屋は今日も忙しい。 16時頃、お店に訪れたのは20歳後半の女性だった。スーツ姿がかっこいい。 「すいません、お花を探しているんですが」 - はい、どういうお花でしょう 「あのー。いいずらいんですが、相手を殴るための花ってありますか。花をそん…

返ってこないLINE

送らなければよかったかな、と反省した。 春の陽気に誘われてつい送ってしまった。LINEに取り消し機能があればいいのに。 既読の文字が肉肉しい。 「久しぶり。今度、飲まない?」 2年前の彼女に送った未練がましいメール。もう少し丁寧な送り方もあったと思…

女性1人で牛丼屋に入れますか

平日の夜、23時ごろ、最寄り駅から帰っていると、1人の女性いた。松屋の中を覗いている。 僕は遠目からそれを見ていて「入れ」と心で念じていた。女性は、牛丼屋に1人で入りにくいと言われている。でも、食事に男女なんて関係ないわけで、できれば女性が気に…

世界に借りがある

「まじか」と思わず声に出る。その声と一緒にでた息が白く濁る。 この寒さの中、こんな何もないところで自転車がパンク。これは辛い。 すっかり空気が抜けている。何かを踏んだようだ。とはいえ乗れるかな、と自転車に乗ってみるが、とてもじゃないが危険で…

食事は独りで?それともみんなと?

Netflix野武士のグルメお題「ひとり飯」 「独りで食事するよりも、みんなで食べた方が美味しい」なんて戯言が、世の中にまかり通っているのはなぜなんだ、とトオルが言う。 話をしながらの食事だと、食べ物の味がわからないじゃないか。あるいは、話が盛り上…

花粉症バスターズ

ゆみちゃんが花粉症みたいだ。僕は花粉症じゃないから辛さがわからないけれど、ゆみちゃんは「つらいよー」と言っている。 だから、僕はゆみちゃんを助けようと思った。でもこっそりする。こっそりしないと恥ずかしい。それにクラスのみんながうるさいから。…