眠る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです。最近テクノロジーをテーマにしたものに凝ってます)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます あとスターも励みになります!

2016-05-01から1ヶ月間の記事一覧

何もしてないのに

いや、ほんとに何もしてないんだよ。いつも2人でよく行く店で飯を食ってた。奴はレモンパスタで、俺は、カルボナーラ。普段はカルボナーラなんて食べないんだけど、なんだかその日は、こうクリームが食べたかったんだ。そして、普段通りのカルボナーラがでて…

歯医者で流れる映画の謎

室内で流れている映画を眺めていて「ん?」と気づく。何かおかしい。 私の行きつけの歯医者では診察台の前にテレビがおかれ、そこでは映画が流されている。待ち時間もそれを見ながら時間を潰せるわけだ。なぜ映画か?というと、おそらく字幕を表示できるから…

色の錬金術士

※今回はすこし「グロ」い表現が含まれていますのでご注意ください 彼は、色の錬金術士のようなものだった。目にみた風景を、絵に描写する。その色合いが現実のものそのものだった。 彼はその色をつくるのに、あらゆるものを組み合わせて生み出す。炭や牛の糞…

欠けた公園

その公園には欠けているものがあった。 しかし、揃ってもいた。たとえば、噴水があった。5メートルも吹き上がる噴水は、公園の中心に据えられ、多くの人々の目を楽しませてきた。朝の10時から17時まで、5分間隔で吹き上がり、時には鳥が水を飲み、子供がボー…

鼻血が出たら死ぬ国

その国は、鼻血が出たら死ぬ国だった。鼻血が止まらずに、衰弱してしまう。温泉の湧き水のように鼻水が溢れ続けるのだ。とても怖い。 だから、人々は鼻血が出ないようにする。子供たちが鼻の穴に指を入れていたら、「なんてことをするんだ!!」とまるで体温…

庭の桜

人を幸せにするにはどうしたらいいんだろう、と考えた。 友達を笑わせることならできる。ただ、それ以外に僕は世界に対して幸せを貢献しているんだろうか。寄付をすればいいんだろうか。そうして僕はコンビニの募金箱に10円以下のお釣りは入れることにした。…

食べログ3.0の中華料理屋の魅力

サトシは、人がいない中華料理屋が好きだった。ただし、毎日いく、というわけではない。定期的に、体がそのような中華を欲しくなる。 「人気のある中華」ではない。味が今ひとつピンとこないが、しかし、ご飯は大盛りで腹には貯まる。油もたっぷりで食欲はそ…

明日のお弁当のおかずを考える課長

最初に聞いた時は信じられなかった。25歳の人間にとって「目覚ましなしに朝、目が覚める」なんて、超能力でしかなかった。 「朝、5時30分には起きますよ。子供のお弁当を作るとなると、それくらいに起きなくちゃいけなくて」。40を超えた男がミートソースス…

一番線のない駅

一番線のホームがない町だった。実際にはホームの名残はあるけれど、トイレとなっている。そして、使われていない線路だけが残り、2番線と3番線だけが使われている。 横須賀にあった横須賀造船所に天皇が行くために使われた路線が一番線だった、と言われてい…

かき氷からわかる相手の性格

車の運転時には、人の本性がでるという。つまり、普段はおとなしい人でも運転をしている時は、スピードを出すという面を見せたり、前の車を罵倒するといった面を見せたりする。すなわちデートでは、ドライブ時の運転には最新の注意を払った方が良い。 しかし…

人は秘密の話をどの場所でしているのか?

2017年、シークレット研究所の調査によって、「人はどの場所で秘密の話をするか」という分析が行なわれた。それは日本人1万人を対象にしたこれまででもっとも大きい秘密に関する調査であり、その結果、今まで分かっていない秘密の生態系が露わにされた。 人…

誰かへの乾杯

金曜日の夜。ガーデンプレイスで待つ友人の元に向かう。駅からガーデンプレイスまでの歩く歩道は、普段は疎ましいけれど、なんだか今日は気分が良い。うっかり西口から出てしまったけれど、空気が気持ちよくてそのまま外からガーデンプレイスに向かうことに…

なぜ子供は産まれるのか?

ツナヨシは、子供はどう産まれるのか?を考えていた。他の子供たちと同じように、その不思議に気づいた。 小学校の低学年だったろうか。彼は持てる知識を振り絞って考えた。「結婚したら産まれる」というのが、一番有力な可能性があるものだった。なぜなら周…

愛の銀行

母が私のために何百回と神社に行っていた。それを知ったのは、母が他界してしばらく経ってからからだった。 大学から東京に出てきた私はそんなことつゆもしらず10年以上を過ごしていたことになる。就職活動の時、海外旅行に行っている時、そして、私が仕事で…

温泉でも行こうなんていつも話してる

温泉でも行こうなんていつも話してる 落ち着いたら仲間で行こうなんてでも 全然暇にならずに時代が追いかけてくる という昔の曲がiPhoneから流れる。Google musicで懐かしい曲をランダムプレイしていたら、リンドバーグの次に流れた。 タクシーの窓から雨の…

座禅とLINE既読と禅問答と

汝、このことはご存知か。 座禅というものがある。座禅には大きく分けて、2種類の流派がある。「臨済宗」と「曹洞宗」だ。聞いたことがない?では黙って聞くが良い。詳しいことは知らなくとも良い。ただ、知っておくべき点はこれである。曹洞宗の座禅は黙っ…

ディズニーのスターツアーズで起こった悲劇

これはディズニーランドで起こったある悲劇のお話である。 ディズニーランドにあるスターウォーズをテーマにした乗り物がある。宇宙船に乗って宇宙旅行に出かける、というアトラクションだ。 そのアトラクションの乗り物までの途中に、ある仕掛けがある。サ…

笑いのマシンガン

つまらないと思いながら笑うことの苦痛は、いつか慣れるのかな、と思う。私の前では、トモコが体操着でバレエの踊りのような踊りを踊っている。周りの人たちは机を叩いて笑う。私も負けじと笑う。何が面白いのか全然わからない。他の子たちは分かって笑って…

ソーセージしかない国

その国では、ソーセージしか食べ物はなかった。米や小麦は尽く枯れてしまった。野菜も育つような土壌ではなかった。魚も取れない海で、牛や豚もいなかった。輸入しようにも、通貨が弱く、輸入ができなかった。ただ、ソーセージだけ余っている国があり、ソー…

最近、いつ「助かりました」と言われましたか?

生活していて「助かりました」と言われる経験って、あまりないな、ということに気づいた。 「ありがとう」はある。それこそコンビニで買い物した時や会社でドアを押さえておいてあげた時。ただ、それは「助かった」とは違う。この助かったは「困っているのを…

ほなね

3階から乗ってきた方は関西弁だった。 「ほんまかいな」という声が聞こえた。「本当なのかな」と私は頭の中で訳した。ついでに「Really?」と変換して、さらにもう少し頭の奥のライブラリを引き出し「真的吗?」という単語を引っ張りだした。ジェンダマー。 …

トゥコが吸っていたもの

ブレーキングバッドというアメリカのドラマがある。運命の歯車によって最高の麻薬を作ることになる化学教師のドラマだ。 そのシーンの1つに、その麻薬を試したマフィアが、最高に興奮するシーンがある。「タイ、タイ、タイ、Yeah!」と叫ぶというシーンは「こ…

あなたの打鍵は他の人には異なり響く

時計の時間が過ぎていた。この時計は自動巻きなので、1日付けていないと時間が遅れ始める。普段より時間が2時間30分くらいずれていた。 でも、忙しかったのでそれを調整しないまま、それを付けていた。時間は「この見えている時間より2時間30分足した時間が…

ガムランボールの効用

ガムランボールを買った。 バリで古くから伝わる楽器のガムラン。その音色を奏でるとされている真鍮のボールをガムランボールというという。 いわば、古くからの楽器を模した鈴のようなアクセサリーだ。振るとシャランという音が心地よい。それをネックレス…

日陰を譲る

シゲルはあまりにも疲れていた。彼はそれを「絶望」という言葉で自分を理解していた。主に仕事での失敗や苦労からくるものだったけれど、プライベートがない彼にとっては仕事=人生の全てだったから、そういう点では、人生のあらゆる面においてシゲルは疲れ…

離島にある使われない舞台の物語

30年前、オランダ系アメリカ人は、インドネシアのその島にホテルを作ろうと思い立った。ビーチ巡りが趣味の彼にとってその島とのめぐり合わせは時間の問題だった。 多くのリゾートを見てきたが、この浜の美しさは格別だと思った。リゾートは最終的に海の美し…

Instagramで過去の恋人と再会する

ビールの日光の透け具合が重要だ、とビーチの砂にビールの入ったグラスを埋めながらナギサは考える。 Instagramで重要なポイントは「構図」「対象」は言うまでもなく、それを活かすのは「光の利用だ」とナギサは考えている。実際、夜の写真よりも昼の写真の…

答えは風の中にある

南国の夜風に吹かれながら考えた。28度ほどの暑さの中で海から吹く風はとても心地よく、風の魅力を体で受け止める。こんな大変が無料でできるなんてなんと世界は素晴らしいことだろうか。 真夏に朝、シャワーを浴びて、髪の毛が濡れたまま、窓を空けると、そ…

飛行機にて

西川が飛行機に乗るのは6度目だが、人生ではあと50回以上も乗ることになることを西川は知らない。隣にいる恋人の酒井は、この旅行でサンゴ礁で足を切って怪我をしてしまうが、今は傷ひとつない生足がエコノミークラスのシート下に収まっている。ビーチサンダ…

見えないものが見える彼女

「ねえ、あれはしし座かな」と彼女は夜空を指さしていった。星座の授業にまったく興味が持てなかった俺は、「ああ、そうなんだ」としか言えなかった。せめて北斗七星くらいだったらわかるのだけれど、、。 そして、付き合って一年目の記念でいったレストラン…