眠る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです。最近テクノロジーをテーマにしたものに凝ってます)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます あとスターも励みになります!

2017-05-01から1ヶ月間の記事一覧

夜の匂い

夜0時。仕事帰り。たまたま空いていたホームのベンチに座る。 ベンチに座る大人になっちゃったな、なんてことを思いながらベンチに座る。携帯をいじる。Twitterを見ていると、隣の席に女性が座る。 そして、しばらくすると、女性が、シュっと、何かの音を立…

ファーストキスの呪い

無理やりキスをされた思い出というのは、なかなか消えてくれないものだ。特に、それがファーストキスならば尚更。 小学校4年生の頃だったと思う。よく遊んでいた公園に私たちはいた。4人だった。男の子2人と女の子2人。 前後の文脈は全然覚えていない。ただ…

パクチー

パクチーというへんてこな存在がいる。名前からしておかしい。パクチー。強烈な印象を残す。異国感が溢れすぎている。 実際に苦手な人も多い。タイに行くというと「パクチー大丈夫?」とさえも言われるほどだ。 私自身苦手だった。そもそもセロリも苦手だっ…

二軒目の前に

その日は会社の交流会だった。 10周年記念のパーティでホテルの会場を借りてのセレモニーだった。 帰り道、飲み足りない僕は同僚に連絡する。2人とも帰る方向が近いので、たまに一緒に帰ることはあったのだけれど、飲むのは初めてだった。 「どこにいる?飲…

そんなつまらないこと

飲みにいこう、と言ったら彼は驚いた顔をしていた。 そして少し間があいて「ぜひ」と笑顔で返ってきた いつもは彼からのお誘いばかりで、私から飲みに誘うなんて初めてだから、驚くのも当然かもしれない。仕事の打ち合わせは私からいつも予定を入れるけれど…

赤みさす頬

おしゃれな人だな、と思っていた。 緑のスーツやピンク色のシャツ。体型に合わせてぴちっと合わせたさせたそれらの衣類は彼の皮膚の一部のようだった。カメレオンのようだったけれど。 だから、彼が色覚障害だとは気づかなかった。 でも思い返せば、免許を持…

見えないものが見える人たち

「高校生時代は書道を頑張ってたよ」とミキが言う。 丁寧にモヒートを飲みながら。 「全国大会には何度か出たことがあるよ」 書道にも甲子園のように県大会があり、その先には、甲子園のような全国大会があるらしい。ミキは県大会でいつも1位か2位を競ってい…

機内にて

緊急時の避難方法を客室乗務員が説明してくれている。衝撃があると酸素マスクが飛び出てくるからつけろ、だって。恋して息ができない時も酸素マスクが出てきたらいいのに、と思う。 緊急避難の方法も丁寧に教えてくれる。それでも、好きな人に告白できない時…

エジプトで水浸しになったグレーのスーツ

エジプトでは失業率が非常に高まっている。若者では40%になるそうだ。その結果、私が経験したエジプトツアーの体験談をお話しよう。 そのツアーはプライベートツアーだった。つまり大勢の参加者で参加するツアーでなく、私達だけのツアーだった。というのも…

結婚に求められる能力

- 34までに結婚したいの と彼女は言う。 その時に、世の中の人はこう言うだろう - じゃあ出会いをもっと増やさないと。 合コンに行け、Pairsをしろ、結婚相談所を使え。 然り、然り。 出会いが増えれば、結婚相手と見つかる可能性は高まる。少なくとも、家で…

パンツのポケット

友達は、下着メーカーで働く。当たり前だけれど、自分の下着は全部そのメーカーのもので揃えている。 彼氏にも、そのメーカーのパンツをプレゼントしていた。クリスマスや誕生ではなく、仕事の打ち上げやご飯をごちそうになったささやかなお礼に、パンツをプ…

風に吹かれるドローン

ドローンを買った。子供が喜ぶと思ったからだ。 ゴールデンウィークに飛ばそうと思った。休みだから何か子供が喜ぶことをしたかった。 せっかくだから、ちゃんとしたドローンを買おうと思ったら3万円もした。高い。200g以下だから、無人航空機だ。 部屋で飛…

足りない匂い

久しぶりに大学に用事があった。卒業証書をもらう必要があったのだ。 事務所で証書をもらったついでに大学を歩く。5年ぶりの大学はあまり変わっていない。 中庭と生協、そして、食堂。人が少ないだけで何も変わっていない。 校舎に入ると、校舎の匂いがすっ…

アドバイス

なぁ、わかるだろ。 人はアドバイスを聞けないんだよ。 もうそういう仕組みになってる。そういう身体になってるんだよ。他人のアドバイスを聞いた殊勝なやつは周りにいるか?いないだろう。要はそういうことなんだよ。人はアドバイスを聞かない。何度でもい…

ゴールデンウィークの次の祝日

ゴールデンウィークが終わった。次の祝日は、7月17日だとか。つまり2ヶ月近く祝日はない。 なんたることか。 俺が総理大臣なら、6月に休み入れるね。だって、連休が終わって、休みのない日が続くなんて、精神衛生上、耐えれないでしょ。もちろん総理大臣に祝…

死にたくなった時は

10年前のことだ。 僕がお世話になった上司がいた。転職の報告に行くと、悲しみの言葉を一通りくれた。そして、激励の後に言ってくれた言葉が、年を経つごとに重みを増している。 死にたくなったら、美味いものを食って寝ろ 当時は、その言葉の意味がまだあま…

間に合わせます

大切な会議だった。 俺も含めたメンバーはその会議のために1ヶ月前から資料を準備していた。普通だと1週間前から手をつけるくらいだから、どれだけ重要視していたかがわかるだろう。 それでも直前はやっぱりドタバタする。社長確認で訂正が入ったり、クライ…

ユリという女

ユリと言った。素敵な名前だな、と思った。清純そうなその子にぴったりだった。 実際に彼女はお嬢様だった。百合の象徴である「純潔」を表すかのように、清く美しく育てられた。聖母マリアの花が百合というのも納得だ。 僕は彼女に一目惚れをして1年かかって…

ゴールデンウィークの旅行を検討していて気づいてしまった自分の気持ち

ゴールデンウィークらしい。タカオが「旅行いこっか」とLINEを送ってきた。 最近はお互いが仕事に忙しかったので、気を使ってだろう。最近はすれ違いが多くデートらしいデートも数ヶ月していない。会ったのさえ3週間前だ。 付き合って1年だが、旅行もしたこ…

祖母への殺意の動機

9歳の少年が、祖母を殺した。ナイフでの刺殺(死因は出血多量)だった。 9歳の少年は、その1ヶ月前に祖父を病気でなくしたばかりだった。少年はおじいちゃん子、おばあちゃん子だったから、号泣した。 周りの親戚たちが心配になるほどの号泣だった。葬式中、…

デジタルで表現されてしまう好意

写真が好きだった。街を撮った。自然を撮った。そして、人を撮った。 何より人を撮るのが好きだった。友達を撮り、飲み会でみんながはしゃいでいるシーンを撮り、そして恋人の日常を撮った。 ナオは、沖縄生まれらしくきりっとした顔つきで、写真映えする顔…

彼女が飲んでいたコーヒー

コーヒーが好きだった。だから、デートではよくカフェ巡りをした。 目黒川沿いのカフェや長野の山奥にある森林浴が気持ち良いカフェ、虎ノ門にできたビルの上空のカフェ、新橋の隠れカフェ。たくさんのカフェをメイとまわった。 僕は、そこで、カフェラテを…