眠る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです。最近テクノロジーをテーマにしたものに凝ってます)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます あとスターも励みになります!

2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

振り肉

2020年は、焼き肉の進化系として「ふり肉」という料理が空前絶後の人気を博していた。どういう料理かというと、そのままだが、生の肉を振ることによって、「いい感じ」にして、食べるという料理である。 振ることによって新鮮な肉に酸素をまぶし、熟成肉なら…

実は関西人だった

生まれた時から東京人だと思っていた。ナチュラルボーン東京人だと。メトロポリタンでアンニュイでハイソでビーバップな東京人だと思っていた。 でも、実は関西人だったなんて。思わず「なんでやねん」という怒号が襖を揺すったほどだった。そのなんでやねん…

僕たちの大好きな銭湯

銭湯の歴史は長い。古代ローマまで歴史を遡るとすれば、紀元前500年前後。すなわち2500年の歴史がある。 そんな銭湯の裏話を今日は話をしよう。 たとえば、銭湯の価格には、上限が決まっているとご存知だろうか。たとえば神奈川では470円である。 しかし、人…

ラインがラインであるために

LINEというものが普及し、もはやしていない人の方が少なくなった世の中。しかし、LINEは、ときに、想像しなかったコミュニケーションを生むことがある。 たとえば、ユキはクラブによく行く。そこで知り合った男とLINEを交換する。その中のいくつかのLINEは、…

2020年のリアリティ・ショー

2020年、イギリスでは、あるテレビ番組が人気を博していた。「LOVERS」というテレビ番組で、実在する男女のリアルな恋愛模様を放送するというものだった。ただ、それだけのコンセプトだとすでに世界中にたくさんあるだろう。日本でもテラスハウスがある。 し…

ヒップホップサラリーマンYO

会社にラッパーがいる。昨今、フリースタイルダンジョンというラップで戦う試合が人気だが、奴もそれに感化されたようだ。30からラッパーデビュー。もし、それが自分の同僚でなければ「チャレンジいいね。ドープ(やばいね、いいね)だね」と言っていただろ…

EU離脱のその瞬間、オフィスにて

「え」と思わず声がでた。幸い、昼前後でオフィスは賑やかになっており、私の声が響いたわけではない。プッシュ通知がきて、こっそり机の下でみたドル円のチャートは、想像していないカーブを描いていた。104円をつけていたドル円は、100円を割った。 ぐんぐ…

腹痛を助けてくれたもの

まるでそれは雪崩のように突然、ワシオを襲った。ワシオはその瞬間、スタンガンを当てられたかのように身体を跳ねた。突然の腹痛がワシオを襲った。ワシオが聞いていたイヤホンから、激しいEDMの曲が漏れた。 ワシオは思う。「これはやばい。80年ぶりの竜巻…

寝相で天気を操る女

なぜか私が右側を向いて寝た日は晴れで、左側を向いて寝た日は雨だった。 私が天気によって寝る姿勢が変わるのか、それとも、私が向く姿勢に合わせて天気が変わるのかわからないけれど、いずれにせよ、気づいた頃から、そうだった。 中学生頃のある日、「あ…

最後の登庁

知事として、最後の仕事は何だったんだろう、と知事は考えた。机の掃除かな。それならば、そこそこきれいに掃除ができたんじゃないかな、及第点だ、と考えた。 エレベーターに向かいながら知事は考える。 今回、どこで失敗したのだろう。海外出張費か。あれ…

何食べたい?

「夏だから辛いものとかどうかな」と言うと彼女は、「そうねー。辛いもの、辛いもの」と言う。 週末のこの時間だからどの店も混んでくる時間だ。しかも、汗もじんわりと染み出すこの季節。あまり悩まず店を決めたい。 「何か食べたいのある?たとえば肉とか…

マンションの近くに病院がある効用

「聖路加病院ってあるんじゃん。日本での病院ランキングでも上位に入る」 「メディアでよく見る日野原先生がいるとこでしょ」 「そうそう。今でもいるのか知らないけど、ともかく。その聖路加病院の近くにマンションができて、その売り文句の1つが聖路加まで…

リンゴ好きなカップル

2人はリンゴが好きだった。 果物のリンゴ、だ。最初のデートではそんな素振りを見せなかった。でも、何回目かのデートで行ったバーで、フルーツカクテルがあり、女が「リンゴのカクテルってありますか?」と聞いたことで、女がリンゴ好きということが判明し…

バーテンダーが酔うお店

「バーの出会いって不思議なんですよ」とカウンターの向こうでグラスを磨きながら榊さんが言う。 「バーで男女が出会う。それはよくある話です。私が仲介することもありますし、あるいは、たまたまお客さん同士で意気投合をすることもあります。そして、付き…

夢で見る男

熱を出した時にだけ見る夢がある。サーカスのブランコに私は座っている。そのブランコが急にぐるぐる回りだして、私は上下左右がわからなくなって気分が悪くなる。そして、遠心力は強くなり、私はもう踏ん張ることも辞めて、どこかに放り投げられる。観客席…

ノるな

「なぁ、今日、隣の課長が部下に怒ってたんだよ」 「ああ、あのひと、よく怒りますよね」 「でさ、怒られてたのは山下だったんだけど、言い返さないわけ」 「そんな感じですね」 「すると、課長はどんどん怒っていくわけ。音量が大きくなるとかではなく、な…

掛け金が減らないルーレット

子供の頃は、親が家にいませんでした。よく言うところの鍵っ子というものです。これで姉妹がいればもう少し違ったのでしょうが、一人っ子だった私は、学校から帰るといつも1人で遊ぶことが日課でした。私が特に好きだったのは絵を書くことです。チラシの裏に…

損することと幸せにすることと

「人を幸せにすると自分も幸せになるんだよ」と言葉が口癖のような男だった。元来、奴はそのような博愛主義者や利他的な生き様を歩んでいたわけではなかった。しかし、30も超えた頃だろうか。急に、奴はそのような方針を打ち立てた。いわば転向とでも言うよ…

東京タワーを見下ろして

東京タワーを見上げて暮らしていた頃があった。大学生の頃だ。 東京タワーは芝公園にあり、少し歩くと麻布十番や三田になる。しかし、芝公園のあたりはそこまで人気でもなく、意外と学生の僕でも背伸びをすれば住める町だった。もちろん、その分、たくさんの…

舞台があるレストラン

白金台のプラチナ通りにあるその店は、「劇場」という意味合いの名前が付けられていた。その名の通り、劇場をモチーフにしたレストランで、地下一階のドアを空けると、そこは、キッチンを舞台とした劇場のような作りになっている。 オープンキッチンを取り囲…

保険で不倫が経るメカニズム

ハーバード大学は78年かけて、人々の幸せに関して調査してきました。それは、どのような要因が人の長寿と関係があるか、という調査です。 数百人の大学生からスラムで住む人々まで多くの人を対象にし、アンケートやインタビュー、健康診断を継続的にしました…

いろんなお仕事

大変な仕事かと思われていますけれど、そんなに大変じゃないですよ。もちろん、下心のあるお客さんもいますけど、たいていは、普通の方です。年齢層では30代以上が多いですね。若い人はもう少し直接的な快楽を求めるのかもしれません。耳かきを求めるお客さ…

冬の海

鎌倉の七里ヶ浜にパシフィックドライブインというカフェがある。 名前の通り、テイクアウトがメインのお店で、車の人たちがふらっと立ち寄り食事を買って車に戻る。カリフォルニアのロードサイドにあるバーガー屋のような風体だ。 そこで働いている人たちは…

夏の音

夏から生まれてきたのではないか、というほど夏が好きで。どれくらい好きかというと、夏になると「ああ、夏が終わると秋がきてしまう」というほど、夏が好きだ。 夏を形容する表現を見ると、無意識にアドレナリンが分泌される。 たとえば、湘南の江ノ電の写…

首都高

レインボーブリッジを過ぎてしばらく走ると東京タワーが見えてきた。ピンク色の東京タワーが光る。 「ね、どこに行くの?」 女が聞く。男は何も言わずに、一ノ橋ジャンクションでカーブを曲がる。スピードは落ちない。80キロを保ったまま。 ナビは、池尻で降…

高速道路の雨

高速道路を運転していると、急な雨となった。スコールのような通り雨のような激しい雨だった。 夜だったので、視界も悪い。それが雨でさらに悪くなった。 頼りになるのは、前の車のテールランプだった。前の車の灯りを頼りに道を走る。 その時に、いまそこで…

悪いことはしないこと

ある男がいた。名前はヒサシといった。ヒサシは既婚者だったが、女好きでひどい男だった。そのため、その日も、出会い系サイトで、女性を探していた。出会い系サイトの名前はPairsと言った。有料サイトだが、多くの男女が利用していた。 ヒサシは、サイトで…

100年後の町

肩が凝って、久しぶりにマッサージに行った。1時間のコースだったのだが、始まってすぐに寝てしまった。起きると、「ここはどこだ!」と思いながら、「ああ、マッサージだ」と思い返す。ただ、脳はついてこず、ふらふらしたまま。そして、着替えて夜の町に出…

雨の後は、良い日になる

未曾有の豪雨がフランスを襲った。一週間降り続いた雨は、セーヌ川さえも反乱させた。ロワール渓谷では数千人規模の住民が避難をしていた。隣のドイツでも多くの避難者が出ているほどだった。そして、その雨はパリも襲った。 セーヌ川が氾濫し、5区や6区は家…

レシートで栞

本を読んでいると、レシートが落ちてきた。古本ならではの趣だ。きっと前の所有者のものだろう。私自身もたまにする。レシートを栞代りにして本を閉じる。 でも、そのレシートが挟まっていたのが、物語の半ばだった。その人は、その後、一気に最後まで読んだ…