寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

ほなね

3階から乗ってきた方は関西弁だった。

「ほんまかいな」という声が聞こえた。「本当なのかな」と私は頭の中で訳した。ついでに「Really?」と変換して、さらにもう少し頭の奥のライブラリを引き出し「真的吗?」という単語を引っ張りだした。ジェンダマー。

すると隣の方は、「ほんまほんま」と言った。私は頭の中で「あいあい」「りんりん」と畳語をつぶやいた。3文字を繰り返す畳語ってないかな、と考えたが思い浮かばなかった。「キットカット」「パペットマペット」という単語が思い浮かんだが、それよりも、おばさんの袋の中に入っているネギが気になってきた。

なぜおばさんの袋にはネギが入っているのだろう。それは、認知のバイアスで、ネギの入っていない袋も多くあるが、それらの袋には注意を払わないので最終的に、ネギが入った袋だけが目につくという話だろうか。

しかし、ネギにもほどがある。青々とした白ネギを3本。すき焼きだと10人前。一体こんなにネギを買って何に使うのだろうか。ネギを使った一人遊びを想像してみた。鼻に入れるには大きすぎる。乗るには小さすぎる。バラエティ番組でみた「殴り合う」などだろうか。あとは下ネタをいくつか思いついたが、おばさんとそれを重ね合わせたくないので首を振った。少なくともネギを3本買う家庭は幸せなんじゃないかな、と思った。メインにはなりにくい食材ゆえに、きっと他の料理の味を引き出すためにそのネギをこの方は活用するのだろう。

隣のおばさんに「ほなね」と言って、エレベーターを降りていった。「ほなね」と私は頭の中で繰り返した。