寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

レシートで栞

本を読んでいると、レシートが落ちてきた。古本ならではの趣だ。きっと前の所有者のものだろう。私自身もたまにする。レシートを栞代りにして本を閉じる。

でも、そのレシートが挟まっていたのが、物語の半ばだった。その人は、その後、一気に最後まで読んだのだろうか。あるいは、途中で本を売ることになったのだろうか。読み終わってからレシートを再度、挟んだとはあまり考えにくいし。

その本は、一種のミステリーだった。水商売をする女の子が主人公で、彼女が失踪した。元恋人が彼女を探す、という物語だ。なかなかおもしろいところで前の所有者は読むのを辞めたな、と思った。ちょうど、失踪者の手がかりがでてきたところだったのに。

ただ、物語よりもレシートの方が気になってきた私はレシートを眺めた。どこかのスーパーだった。人参とじゃがいもを買っている。私は推理する。これはカレーの具だと。

そんなレシートを眺めながら思い出す。昔、私はレシートに書かれたメモを受け取ったことがある。

その人は飲み屋で出会った。そして、その日に私の家に来た。そんな経験は私は初めてだったのだけれど、恋人と別れたばかりという心境が、やけっぱちでもあり、同時に、初めてのことをしたくなったんだろうと思う。夜が明け、朝、ありがとう」と書かれたレシートが私の机の上にあった。私が寝ている間に置かれたレシートだった。彼の電話番号もメールアドレスも知らなかったから、私はどうしようもなかった。

ただ、レシートの文字を眺めた。レシートは、コンビニのモノでミネラルウォーターを買っていた。結局、彼とはもう会うことはできなかったけれど、今でもたまに思い出す。本当にあったことなのか、とさえも思うこともある。でも悪くない思い出で、もしかするとレシートがなければ、夢と考えてしまったかもしれない。

そういう意味では、あのレシートも私の心の栞になってるんだな、と思った。