眠る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです。最近テクノロジーをテーマにしたものに凝ってます)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます あとスターも励みになります!

ポケモンGOの絆

2016年の夏、ポケモンGOが日本を席巻した。老若男女とわず、生きとし生けるもの全てがポケモンGOを利用した。アメリカではツイッターの毎日のユーザ数を超えたが、日本では、インターネットのユーザ数を超えかねない勢いだった。ひどい人では2台持ちながらポケモンGOをした。

ポケモンGOは現実の世界にポケモンが登場するようなインターフェイスをもったゲームで、他の人たちとバトルしながら陣取りをするゲームだ。

アメリカではリリースしてすぐに色々な事件が起こった。たとえば水辺のポケモンを探そうとした少女が死体を見つけた。あるいは強盗犯が、このアプリを使ってユーザをおびき寄せ強盗をするという事件も起こった。

日本でも事件が起きた。暑い中、ポケモンをさがして熱中症で倒れる人が増えた。あるいは、テレビの撮影中にキャスターがポケモンGOをする事件が起こった。会社では、ポケモンの捕獲で喧嘩騒ぎまで起こり、社内規定で利用の禁止をする会社まで増えた。あるいは、子供の名前を「ポケモン」にする親が増えた。ポケモンを探して徳川埋蔵金を見つける人も出てきた。真夜中にポケモン探しでウロウロする人が多くなりすぎて、日本中ギロッポン化現象と言われた。

サトシもポケモンGOにはまっていた。そして、彼女もはまっていた。残念なことに違うチームの2人だったから時に陣取りで戦うこともあったけど、サトシは彼女に譲ることが多かった。ポケモンを探すために散歩をして、ご飯を食べながらポケモンGOの話をした。とても楽しい日々だった。

しかし夏が終わり、2人の恋も終わった。どこにでもあるような話。

サトシは、1人でするポケモンはなぜか味気なかった。ゲームの話をする相手がいないということがこんなにも寂しいものだとは知らなかった。

サトシは、彼女の家の公園に向かう。彼女が、自分のポケモンを置いて大事に守っていた陣地だ。一ヶ月ぶりに訪れる公園だった。そこには、まだ彼女のポケモンがいた。まだ、彼女がポケモンをしていることになんだか嬉しかった。同時に、「彼女にも、サトシとしないポケモンはつまらないわ」とも思っていたので複雑な心境だった。

ツイッターFacebookをしない彼女の生存は、このポケモンの存在を通じて確認することができた。別れて3か月がたっても、サトシは休みの日にはあの公園にいき、彼女のポケモンが元気かを確かめた。

ある日、サトシは思う。「このポケモンを俺が倒したら彼女はどう思うだろうか」と。喧嘩わかれなので、LINEもブロックされ、彼女とやりとりをすることはできない。だから、こうやって彼女への思いを伝えることはできないだろうか。

一週間かけて、サトシは彼女の公園のポケモンを退治した。彼女は俺に攻撃されていると気づいていたのだろう。最後の日には体力補給もしていなかった。彼女のポケモンは消えた。そして、サトシが彼女の生存を確かめる方法もなくなった。

サトシは彼女のポケモンを探して、彼女の家の周りをずっとあるき続けた。けれど、もう彼女のポケモンと出会うことはなかった。

そして、ある日、彼女のポケモンから奪った陣地も他のユーザに奪われた。そこは彼女との思い出の地だから、なんとしてでも死守したかった。でも全く刃が立たなかった。あっという間に負けた。

彼女の思い出の地さえ守れなかった自分を知った。サトシはやっと彼女に振られたという現実に向き合えた。サトシがその公園に足を運ぶことは、もうなかった。

 

※執筆時点では日本ではまだポケモンGOはリリースされておらず上記は想像です