寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

雨の効用

今日は夕刻から雨が降った。土砂降り、と言われる類の雨だった。豪雨であり、雨でエレベーターが開いてしまう店もあったようだ。

そんな雨の中、あるBARに足を運んだ。特に用事があったわけではない。「今週寄りたいな」と思った日が今日だっただけだ。そして、その思いは雨によって変わるほどの弱いものでもなかった。

案の定、店には誰もいなかった。少し早い時間だったということもあるが、普段の混雑具合からすると珍しい。こんな音楽流れていたんだ、と思わずBGMに耳を澄ます。

バーテンダーと話をする。

- 夏が始まると、もう夏の終わりを想像してなんだか悲しくなるよ。そう考えると冬が一番いい。これからくる夏の季節を楽しみに迎えられる。夏好きなのに、結果的に冬が好きってのは因果なものだね

マッカランを飲みながら、そんな他愛もない話をし、紫煙をくゆらせていると、ドアが空いた。

- ああ、ミツさんだ。こんにちはー。お久しぶりです

- 久しぶりだね。まだ雨振ってる?

- 振ってますよー。歩けないくらいでした。

数ヶ月ぶりに3度目にあうその子は、なんだか雨に濡れて、そのばらついた髪の毛が妙に色っぽかった。

- こんな雨なのによく来たね

とバーテンが聞く

- そうなんです。こんな雨だからこそ、どういう人がくるんだろう、と思ってきちゃいました

- で、俺がいたというわけだ

- そうです。納得でした笑

なるほどな、と思う。雨は億劫だが、同時に、雨は人を選ぶ。こんな雨の中、わざわざ駅から遠いこんなBARに来るのは、変わった者だろう。俺のような雨を雨として認めない人間や、アキコちゃんのような好奇心旺盛な女の子か。

非日常はときに人を近づける。

きっと雨は人を選ぶのだ。雨を恐れない者だけが、雨の先にあるひだまりにたどり着ける。

雨は人を選ぶ。