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寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

葛藤

アイギュンは混乱していた。クーデターへの抗議には、町へ出よ、とエルドアン大統領は言う。ただ抗議すべきなのか。

軍が政権を握ることは避けなければいけない。エブレンによる30年以上前のクーデターでは数十万の人が拘束され、数千人が拷問にかけられた。俺自身はほとんど記憶がないけれど、父にずっと言い聞かされてきた。軍によるクーデターの悪夢を。

ただ、とはいえ、町に出るべきなのか。タクシム広場では何人か反クーデターの連中が打たれたと聞いた。そこまで命をかけれるのか。エスラとも数時間前から連絡が取れない。彼女も町に出るんだろうか。

何がひっかかっているのだろう。打たれることが怖いからか。それよりもエルドアン大統領のために身体をはることに抵抗があるのかもしれない。クーデターには反対だが、それはエルドアンを認めるのとは別だ。エルドアンは力強いが、市民の自由を奪ってきている。先生やパパがそういうのだからそうなのだろう。だから、そんな人のために僕は命をかけられない。

ユイアトは町に出ているそうだ。何人かで集まり路上に座っていると聞いた。場所によっては軍が通るだろう。その時にユイアトは抗議するのだろうか。武器は何をもっているのだろうか。Facebookでは混乱する町並みがうつり、メッセンジャーでは友人たちが作成するグループで、色々な情報が飛び交っている。

こんな時、パパが生きてくれていたら、と思う。仕事やプライベートのことは自分で何でも決めることができる。でも政治はよくわからない。何が正しいのかわからないし、過去のことも知らない。パパに聞きたい。

エスラと連絡をとってから考えようか。エスラは無事だろうか。エスラの家に行ってみようか。

気がついたら腹が減った。晩飯を食ったばかりなのに。

クーデターが成功したら町は変わるだろうか。辛い日々も変わるだろうか。パパがいうように多くの人が拘束されるのは嫌だ。でも、自分の人生がよくなる可能性もあるんだろうか。

でも先生がクーデターは反対という投稿をしていた。だったらやっぱりクーデターはいけないのだろう。でも、なんだか日常が変わると考えると、少し興奮する。この興奮は何なんだろうか。でもやっぱり後悔するのだろうか。

夕食の時に缶で切った指が痛む。

誰か教えてくれ。俺は町に出るべきなのか。