寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

自分の掛け値

情熱大陸を見ていた。すると、リオのカーニバルで踊る日本人女性をテーマにしていた。

工藤めぐみさん、という女性だ。リオカーニバルで優勝候補となる競合チームで唯一の日本人ダンサー。19歳の時に、言葉もしゃべれないままリオにダンス留学をし、いまに至る。今回のリオのオリンピックでも、開会式で大役を努められた。

彼女は不安と戦う。毎年、リオのダンサーに選ばれるかはわからない。いわばスポーツと一緒で、勝てるかどうかわからない勝負だ。

そこで、その勝負する姿に重ねて、テレビのナレーションは言う。

- 彼女は自分に賭けている

と。

つまり、自分が成功するように、自分がダンサーに選ばれるということを信じ切って、それに賭けている。もちろん不安もあるだろう。自分を信じられない時もあるだろう。しかし、それでも最後は自分に賭けている。

人は、時に失敗をする。自分を信じられなくなる。あるいは、逃げ出したくなる。もうどうにもならないんじゃないか、と思う。恋人に振られ、あるいは、仕事を首になり、あるいは、事故にあう。私も似たような経験だってある。そういう時はひたすら落ち込み、世界が敵になる。もしかすると今回のリオのレスリングの吉田選手や卓球の福原選手だって、落ち込んだかもしれない。

キルケゴールは、その絶望を「死に至る病」と呼んだ。人は希望をなくした時に死に至る。

そこで、救えるのは、自分しかいないのだ。つまり、その時に自分にかけてくれるのは自分しかいない。もちろん、家族や、あるいは、恋人はあなたを応援するだろう。

しかし、その声援を掛け値として右手に握りしめ、それを賭けるのはあなたなのだ。たとえ自分が信じられなくても、それでも、目を見開き自分を信じ込むのだ。フルローンでフルリバレッジでダブルダウンで。

お金の借金は賛否あれど、自分への信頼は足りなければ他から借りてくればいいのだ。幼かった頃に自分が英雄だった思い出や友達の暖かい言葉、大切にしている言葉や物を担保に自分に自分を掛けるのだ。小さな思い出をかき集めて賭けるのだ。あの日の英雄は、大人になりくすんでしょぼくれてしまった。しかし、そこからV字回復してこそのドラマなのだ。他の人が誰も見向きもしていない銘柄だからこそ、そこに掛けた時のリターンは大きいのだ。

あなたは自分を賭けていますか?