寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

どこかの声が聞こえる場所

港区の大きなモールであるヒルズのある場所では、遠くの声が反響して聞こえる。建築家が意図したものか、たまたまかわからないが、入り組んだ建物の関係で、そこでは不思議な現状が起こる。

その場所に立つと、少し離れた場所での声が聞こえるのだ。まるでそれは横に人がいるかのように。

人々はそれを心霊現象と呼んで楽しんだり、あるいは、不思議な観光スポットとして口コミで広まっていった。3階にある中華料理屋のエスカレーターの奥にその場所はあった。

そこにある男もたまたま訪れた。付き合っていた女性がその噂を聞きつけ、男と一緒にそこを訪れた。女はその場所は立つ。

- あれ何も聞こえないね

男はつまらなさそうに携帯をいじる。

- そうか。残念だな

女は場所を変え、声が響く場所を探す。時間は23時頃だったので、人も少ないから反響が少ないのかもしれない、と女は考えた。

その時、男の耳に聞こえたものがあった

- たすけて

と男の耳には聞こえた。男は最初は自分の耳を疑う。幻聴ではないか、と疑う。

しかし、じっと耳をすますと、もう一度

- たすけて

と聞こえる。

女は男の真剣な顔を見て尋ねる

- どうしたの?

男は答えない。

- 誰かが助けてと言っている

男はそのまま周りを見渡す。人はまばらにいるが、助けを求めているような人はいない。

女は、自分にも聞こえるかと耳を澄ますが聞こえない。男は周りを探す。声の主を探すが見つからない。結局、15分ほど周りを駆け巡ったが、声の主は現れなかった。

 

結果、その声の主がわかったのは数年後だった。男は過去に自分が殺めた女性の声を幻聴で聞いたのだった。その場所が反響する声は、今の声だけに限らなかったということだ。

なお最近はそこで

- 君の名は。

という声が響くという噂だ。